研究課題
本研究では、標準理論を超える新現象である電気双極子モーメント(EDM)の探索に向けて、Xe原子の電極素材表面におけるスピン緩和機構の解明を行う。EDMは標準理論を超えるCPの破れに感度のある観測量であり、現在、Xe原子を対象としたEDM探索のために、129Xeと131Xeの異核種同位体を用いた核スピンメーザー法を開発している。これまでに核スピンメーザーの同時発振に成功しており、本測定法を用いたEDM探索を行うためには、電場印加条件でのメーザー発振の実現が必要である。ところが電極素材表面での131Xeのスピン緩和機構はこれまでの全く調べられていない。そこで、本研究では、様々な電極素材表面での131Xeのスピンの縦緩和時間および横緩和時間を測定して、その緩和機構を理解し、高い131Xeスピン偏極度および長い131Xeスピン緩和時間の実現を狙う。本年度は九州大学にて構築した実験装置を用いた測定および開発を行った。断熱高速通過型NMR測定装置を用いた縦緩和時間の測定においては、129Xeおよび131Xeいずれにおいても緩和時間を10秒以上にすることに成功した。また、横緩和時間測定のためのパルスNMR装置においては、安定性に優れるバタフライ型DBRレーザーの導入を行い、昨年度よりも信号-雑音比の向上に成功した。今年度は、ガラスセル製作ステーションの構築も行った。今後はそのガラスセル製作ステーションにおいて様々な電極付きのガラスセルを作成し、それらの縦緩和時間と横緩和時間の測定を行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍の影響で当初の予定よりは実験装置の移設が1年遅れたものの、その後は断熱高速通過型NMR装置、パルスNMR装置とも順調に構築し、それぞれの信号を得ることに成功したため。また、今年度は縦緩和時間の向上および、横緩和時間測定における信号-雑音比の向上に順調に成功しているため。
今後、様々な電極付きのガラスセルを作成し、それらの縦緩和時間と横緩和時間の測定を行っていく予定である。これらの測定を通じて、電極表面でのスピン緩和機構を理解し、高い131Xeスピン偏極度および長い131Xeスピン緩和時間の実現を狙う。
光学関連機器の故障が相次ぎ、さらに海外メーカーからの納期が非常に長く、それらの機器の更新および修理に時間を要するため。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件)
Interactions
巻: 245 ページ: 26
10.1007/s10751-024-01869-2
Scientific Reports
巻: 14 ページ: 2573
10.1038/s41598-024-52692-2