研究課題/領域番号 |
20K20929
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 隆之 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (60713419)
|
研究分担者 |
猪目 祐介 東京大学, 宇宙線研究所, 技術職員 (90869710)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
キーワード | SiPM / 可視光望遠鏡 / チェレンコフ望遠鏡 |
研究実績の概要 |
2020年度は、光センサー部分の開発に従事した。浜松ホトニクスから、16チャンネル SiPM アレイ, S14520 を2チップ購入し、その性能を確かめた。まず、降伏電圧が38.5V前後で16チャンネルとも非常によく一致していることを確かめ、またリーク電流がOver Voltageの二乗に比例し、パルス出力の利得はOver Voltageに比例することを確認した。 パルスの立ち上がり部分が、チャンネルによって少し異なるという特性が見つかった。また。パルス波形は300 ns の時定数を持つ長いテールをもち、これが本研究の目的に大きな問題となるので、波形整形回路の開発に多くの時間をかけた。ポールゼロキャンセル回路を開発し、多少のアンダーシュートが残るものの、出力パルスの半値幅を3 ns にまで低減することに成功した。さらに、有効面積を稼ぐために4チャンネルの信号を合算する回路の開発も行なった。信号の合算そのものはうまくいったが、SN比が悪化することがわかった。信号の増幅器にはPACTAと呼ばれる差動型増幅機を採用することとした。 数MHzのダークカウントや、~20%のオプティカルクロストークやアフターパルスの存在など、研究に支障をきたしかねない特性も見つかった。それらを低減する検出器の改良や、解析手法の開発などが今後必要となってくるが、大問題ではないと考えている。出力電荷の利得の温度依存性も確かめられたが、温度制御さえうまく行えば、本研究には問題なさそうである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採択が決まったのが8月で、Covid19による活動の制限などもあったことを踏まえると、短期間で光センサーSiPMについて、詳しく測定ができたと思う。信号合算や、波形の整形など、開発に時間がかかるかもしれないと思っていた点が、速やかに解決できた点はよかった。オシロスコープや恒温槽など、研究開発に必要な機材も良質のものが導入でき、今後も効率よく開発が進められそうである。 一方で、データ記録回路の開発には手がつけられなかった。この部分も開発に時間がかかる恐れがあるので、早急に取り掛かりたい。
|
今後の研究の推進方策 |
光センサーの試験には、安価で早急に手に入る16チャンネルのSiPMをこれまで用いてきたが、実際のモジュールに組み込むには大きすぎる。4チャンネルのSiPMをまず浜松ホトニクスに開発してもらう必要がある。それを用い、信号合算および整形回路を完成させる。並行して、CTA大口径望遠鏡に用いられている信号読み出しボードのファームウェアと、スロー制御ボードを改造をし、信号を連続的によみ出せるようにする。京都大学の野崎氏や、宇宙線研究所の大岡氏の協力を得る。 実験室でSiPM信号の連続読み出しが完成させられたら、それを明野観測所の大気チェレンコフ望遠鏡に搭載し、カニパルサーからの光学パルスの検出を試みる。最終的には同じモジュールを2台(及びスペア)製作し、それをカナリア諸島ラパルマ島にあるCTA大口径望遠鏡に搭載し、カニパルサーからのGiant Pulseの探索を電波望遠鏡と協力して行う。また、2台の大口径望遠鏡により、光度干渉系システムを作る。それにより、2等星Adharaの半径測定を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究費が交付されたのが予定より数ヶ月遅れたことが主な理由である。また、Covid-19により研究活動(出張を含む)がある程度制限されてしまったことも大きかった。
|