研究課題
本研究は、テラヘルツ波の基礎技術課題の一つである「伝送」の技術開拓に着目し、電波望遠鏡用受信機に使用される導波管立体回路での伝送損失を極限まで低減させる新しいアイデアの実証実験を行うことを目的としている。2020年度は、超伝導金属として純ニオブ(Nb)材を用いた導波管の試作のため、金属加工会社での加工試験を実施した。Nbは難削材として知られ、加工実績もほとんど無いことから、まずは低周波のミリ波帯の矩形導波管で試作を行うこととし、100 GHz帯(WR-10)、200 GHz帯(WR-4)、400 GHz帯(WR-2.2)の直線導波管の加工を試した。加工後の寸法測定と表面粗さ測定を実施し、Nbの切削特性や加工条件、加工精度の情報を得ることが出来たが、Nbの加工はやはり非常に難しく、充分な精度が得られたのは最も導波管サイズの大きいWR-10のみであった。その後、ベンド導波管加工、ねじ切り、2つのピースの組み合わせ加工、他のコンポーネントと接続に必要なUGフランジの加工を試したところ、これらについては大きな問題が無いことが確認された。さらに、今後は伝送特性の評価のために共振回路を持つ導波管を製作するため、0.2~0.4 mmという微小なアイリス窓の構造を含む要素も試作したが、こちらも概ね良好な結果を得ることが出来た。
3: やや遅れている
2020年度は、感染症の全国的な拡大に対する対応のために、大学キャンパスへの入構制限と出張の自粛措置が度々実施されることとなった。このため、研究室におけるシミュレーターを用いた設計、実験室での評価実験、関係者との打ち合わせなどが、予定通りには実施できなかったため、研究の進捗状況としては「やや遅れている」と判断した。ただし、試験加工については、当初の計画通りに2020年度に完了しており、大きな問題はないと考えている。
現在までの研究の進捗状況としては「やや遅れている」が、2021年度は感染症の対策を取った上で、大学キャンパスでの活動が通常通りに行える見通しである。出張は制限があるが、これはオンラインの打ち合わせを行うことでカバーが出来ると考えている。従って、今後は研究の遅れを取り戻して、計画に沿って進めて行けると考えている。2021年度は、昨年度に引き続き低損失な「超伝導導波管」の実用化を目指し、製作技術の確立、伝送特性の実験的・理論的解明、さらに有用性の実証を行って行く。
本研究で加工を行うニオブ材は難削材であり、金属加工会社も加工の実績が無い。そのため、導波管の試作に必要となる加工費が全く分からなかったため、初年度の物品費を多めに設定していた。結果的に、予定よりも安価に試作は完了したため、次年度使用額により引き続き本製作を実施する予定である。また2020年度は、感染症の全国的な拡大に対する対応のために、長期に渡って出張の自粛措置が実施され、特に予定していた国立天文台(東京都三鷹市)での打合せが行えなかった。さらに学会・研究会も現地開催が中止され、ほとんどはオンライン開催となったため、予定していた旅費の支出は全く無かった。2021年度は、感染症の終息が進んだ場合には、次年度使用額を出張旅費に充てる予定である。
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