研究課題/領域番号 |
20K20935
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
勝田 哲 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50611034)
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研究分担者 |
田代 信 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00251398)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | X線天文衛星 / カニ星雲 / 超高層大気 |
研究実績の概要 |
カニ星雲の地球大気掩蔽現象を通じ、地球超高層大気の密度鉛直プロファイルを測定した。昨年度は日本の最近のX線天文衛星「すざく」「ひとみ」を用いた測定にとどまっていたが、本年度は、1993年打ち上げの「あすか」衛星から、現在も稼働している米国のX線天文衛星「NuSTAR」「NICER」まで、合計6つの衛星に搭載された9つの観測機器のデータを包括的に解析した。これにより、過去30年間にわたる大気密度の長期変動を調査した。その結果、上空 70-120 km のほとんどの高度で、密度が 0.5% / 年のペースで減少していることを明らかにした。この密度低下は、定性的には、温室効果ガスの増大に伴う超高層大気の寒冷化及び収縮で説明可能である。しかし定量的には、観測した密度減少率は最新のモデル予測より数倍も大きい。この食い違いの原因として、超高層大気中の CO2 増加率が地表付近より大きい可能性や、超高層大気中のオゾン欠乏や水蒸気の増加の影響が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題が始まった初期段階にて、当初計画していなかった観測法「大気掩蔽現象を通じた超高層大気密度の計測」を着想した。この観測は、少なくとも研究課題メンバーにとっては新しい観測手法であったため、解析手法の確立に労力を要した。しかし複数の困難を克服し、初年度には研究のアイデアと初期成果を査読論文(Katsuda et al. 2021, JGR)として発表した。続いて、日米の複数のX線天文衛星に同じ手法を適用し、超高層大気密度の長期トレンドを調査した。その成果はすでに複数の研究会やセミナーで発表している。第二報の査読論文も準備中である。 太陽コロナの研究に関しては、2005年9月の巨大太陽フレアで放出されたコロナ中のプラズマが、地球近傍の中性ガスと電荷交換反応して放射するX線イベントを解析した(Asakura et al. 2021, PASJ)。この種のX線観測データを使って、太陽風プラズマの組成比・温度・密度を探る方法を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、大気掩蔽観測による超高層大気密度の長期トレンドの測定結果を論文化する。並行して、当初計画していた通り、「すざく」衛星のアーカイブデータを活用して、地球大気からの蛍光X線(N-K, O-K)を通じた大気密度・組成比を測定する。また、太陽フレアに伴う電荷交換反応X線の解析・解釈も継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越金の発生理由: コロナウイルス感染症拡大の影響で学会や研究会がオンライン開催やキャンセルとなったため。 繰越金の使用計画: 国内外の複数の研究会への旅費、およびパソコンとその周辺機器を予定している。
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