本研究は、金沢大学で開発が進められているフォトンカウンティングCTシステムを岩石試料に初めて応用することを目的として行われた。研究手法とその成果は以下のとおりである。 金沢大学作成のフォトンカウンティングCTの適正な試料サイズと形状:試料のサイズや形状によるアーチファクトの影響を補正するよりも,補正をしないで測定できる条件の検討を行った。その結果,通常の地殻やマントルを構成している岩石については直径8mmの円柱試料が良いことがわかった。 試料のCT画像コントラストの比較と相の分別の可能性の検討:地殻を構成する岩石でも主要な無色鉱物として石英と方解石を選び,フォトンカウンティングCTを用いて画像のコントラストを比較した.フォトンカウンティングCTではエネルギー値をいくつか分けてコントラストの比較を行った.フォトンカウンティングCTを使った値を積分したデータを通常のCT値として評価をした.その結果,適切なエネルギー値を設定することで通常CTよりもよりコントラストがついた画像が得られることがわかった.さらに,フォトンカウンティングで得られるAttenuation 曲線によるエネルギーウインドウ間の傾きの平均値と平均CT値を用いることで,それぞれの物質を弁別できる可能性が示唆された。 通常試料への適用とその効果:上記の結果を踏まえて,石川県白山市手取川流域で転石として採取された主に石英と炭酸塩鉱物からなる堆積岩に適用した.その結果,炭酸塩鉱物の3次元分布を構築でき,さらに炭酸塩のAttenuation曲線との比較から,炭酸塩鉱物であるということが事前にわかっていれば,その化学的な情報を得られる可能性が示された。
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