地球に生命が誕生したとされる35億年前、標準モデルによると太陽は現在よりも暗く、地球は全球凍結の状態にあり、生命が誕生する事が難しい状態にあったと考えられている(The Faint Young Sun Paradox)。昔の太陽が暗いと考えられている理由は初期太陽における核融合反応が活発で無いと考えられているためであり、精緻な標準太陽モデルでは、疑いの余地なく、当時太陽は現在の明るさの75%程度しかないことを示している。この問題は太陽と地球環境の関係に関する最大の未解決問題のひとつである。本研究課題では、これまでとは全く違う、「昔の太陽は実は暗くなかった」可能性について、太陽地球環境・天文学の立場から検討する方法を考察した。 この研究を行うため、太陽地球環境システム進化モデルを開発し、この仮説を検証を試みた。 このモデルは五つからなり太陽地球環境の進化を推定するものである。①太陽表面磁束輸送(SFT)モデルによる全球表面磁場分布の予測([2]Iijima et al. 2017)、②全球磁場分布から太陽風の予測(太陽風WSAモデル)、③全球磁場分布から太陽フレア・CMEを予測([4]Kusano et al. 2019)、④全球表面磁場分布(極域磁場)から次期太陽周期活動を予測([2]Iijima et al. 2017) 、⑤太陽風・CMEから太陽の質量損失・角運動量損失を求め恒星進化(質量・回転速度) ①と②の接続に成功し、太陽表面磁場の時間発展に伴って変動する太陽風の予測は可能となった。また①と④の接続にも成功し、例えばマウンダー極小期のよう特異なサイクルがどのくらいの確率で生じるかなど議論できるようになった。一方で、③および⑤に関してはなかなか難しい点があり、今後の検討課題として残っている。
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