研究課題/領域番号 |
20K20952
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
諸野 祐樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30421845)
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研究分担者 |
山村 雅幸 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (00220442)
浦本 豪一郎 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 講師 (70612901)
谷川 亘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (70435840)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 海底下生命圏 / X線断層撮影 |
研究実績の概要 |
本研究ではナノスケールで物質の三次元構造観察を可能とするコンピューター断層撮影(XCT)を活用し、環境試料中に存在する微生物及びその生息空間の三次元観察を目的としている。地球バイオマスの数~10%程度を占め、その生態が謎に包まれる海底下微生物について、極限環境における生命存続戦略や地球規模の元素循環に果たす役割を明らかにすることを目指した研究課題である。微生物のみならず、地層中の微小鉱物との相互作用、相互配置を含めた総合的な地層環境の解析を可能とする技術へとつながるものである。 本研究では、ナノスケールX線CT(NanoxCT)により微生物とその生息空間を可視化する。DNA解析等の分子生物学、および光学・電子顕微鏡解析の発展は環境微生物の機能・生き様を次々と明らかにしてきた。しかし、微生物とそれを取り巻く微小空間、つまり「微生物の家」について立体的かつサブミクロンスケールで観察した例は皆無であり、地層環境のどこに、どうやって微生物が存在しているのか、知見が全くない。全地球バイオマスの数~10%程度を占め、生態が謎に包まれる海底下微生物を観察対象とし、極限環境における生命存続戦略や地球規模の元素循環に果たす微生物生命の本質に迫る。 本年度はオスミウム染色などでコントラストを得た微生物が、三次元的にどのような可視化のされ方をするのかを詳細に検討した。純粋培養した菌体やそれと堆積物試料を混合した標準試料を作成し、NanoxCTで可視化を行った。樹脂に包埋することによって試料の変形を抑えつつ測定を行ったところ、大腸菌レベルの細胞サイズでも、一つの細胞を可視化で来ている状態を2次元スライス画像上で確認することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに進んでいる。微生物細胞の可視化も2次元スライス上で可能となっており、当初想定していた計画にある程度沿った結果が得られている。しかし、エネルギーを変化させた測定を行った場合、試料の変形またはその他不明な理由により、連続して測定しているにもかかわらず異なるエネルギーでの測定結果2つを重ね合わせることが出来ないことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の問題は、微生物特異的可視化において、客観的な判断を行うことが難しくなることを意味する。試料が高密度のX線照射により部分的な元素脱落が起こることも理由として考えられるが、それぞれのエネルギーにおいて可視化は出来ている。画像としては取得できているため、計算的にその変化の補正も行うなど、ハード、ソフト両面からの解決を狙う。
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次年度使用額が生じた理由 |
エネルギーを変化させた測定を行った場合、試料の変形またはその他不明な理由により、連続して測定しているにもかかわらず異なるエネルギーでの測定結果2つを重ね合わせることが出来ないことが判明した。上記の問題は、微生物特異的可視化において、客観的な判断を行うことが難しくなることを意味する。その現象確認を行うため繰り返しの測定を必要としたため、試料調製の消耗品使用量が想定より少なくなった。また、COVID-19によるリモート学会や会議のリモート実施により旅費の使用が想定より低くなった。上記の問題を解決し、研究目的をより精緻に達成するため、次年度に新たな試料調製のための消耗品購入、および計算による変化補正のためのPC、パーツなどの購入、PC作業に従事する補助作業者の人件費として使用することを計画している。
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