本研究では,微小薄膜抵抗体で構成するマイクロ熱検知センサと,集光フェムト秒レーザで構成した共焦点光学系とを融合して,試料表層下(サブサーフェス)の局所加熱とそれに伴う微小熱応答の高精度検知を両立する「フェムト秒レーザ熱検知プローブ」を構築し,非接触・非破壊サブサーフェス高精度評価を実現する手法の確立に挑戦することを目的としている.試料に対して高い透過特性を有するフェムト秒レーザを集光してサブサーフェスを局所的に安定加熱するとともに,集光フェムト秒レーザ内にマイクロ熱検知センサを配置し,試料面との間隙を共焦点光学系でフィードバック制御した状態で熱応答を取得することで,組成により変化するサブサーフェスの熱特性をピンポイントで高精度検出する非接触・非破壊かつ迅速なサブサーフェス検査の実現を目指す. 計画最終年度となる令和4年度は,フェムト秒レーザ熱検知プローブの共焦点光学系を構築した.なるべくシンプルな光学系構成となるよう,光ファイバサーキュレータを用いることで,測定レーザ導入開口を,センサ/測定対象面からの反射測定レーザ光の検出開口として共有する構成とした.また,色収差レンズの焦点面近傍にマイクロ熱検知センサ基板を配置してフェムト秒レーザ熱検知プローブのプロトタイプを構築した.なお,共焦点光学系に用いるフェムト秒レーザ光源は,増幅器(EDFA)および高非線形ファイバを用いてその帯域拡大を試みた.基礎特性評価実験の結果,マイクロ熱検知センサ出力をもとに測定面上の微小ラインパターンが検出可能であり,共焦点光学系の出力信号をもとに集光レーザを熱検知センサ素子に精度良く位置決め可能であることを示唆する結果が得られるなど,本研究で提案するフェムト秒レーザ熱検知プローブが,熱検知センサ-測定対象面間の間隙量を検出し,さらに測定面のパターン検出を実現できる可能性を有することが明らかとなった.
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