研究課題/領域番号 |
20K20961
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
永井 萌土 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 教授 (00580557)
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研究分担者 |
沼野 利佳 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 教授 (30462716)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 超並列単一細胞加工 / 決定論的加工 / バイオ3Dプリンティング / ピペットアレイ / ノズルアレイ / マイクロ流体工学 |
研究実績の概要 |
生体外で緻密な多細胞組織を超並列で10の6乗個形成できれば,十分な細胞間相互作用により生体内の状態を再現し,腫瘍や臓器の生命現象を効率的に調査でき る。組織構築には,バイオインクとヒト細胞(直径約15μm)の懸濁液を吐出し,硬化後に細胞を成熟させる。従来のバイオ3Dプリンティングの配置は,トレー ドオフが存在し,高い並列処理数と細胞個数の制御性は両立できなかった。並列ノズルにしても,確率論的な配置となり,個数と距離を厳密に規定できず,細胞間相互作用の安定した再現が困難であり,変革が望まれていた。 そこで本研究では,申請者の有する細胞操作技術,微細加工技術をベースに,構造を知能化・2Dアレイ化するアイデアにより,原理を刷新する。決定論的な細胞加工へと飛躍させ,細胞間相互作用の安定した再現を行う。 決定論的超並列(10の6乗個)単一細胞加工技術の4工程(A)単一細胞分離,(B)ゲル被覆,(C)ピペットへの充填・吐出,(D)位置固定を創成することを目指した。 ペリスタポンプを搭載し,被覆用チャンバを独立させたピペットアレイを新たに開発した。吸引・吐出口,細胞用流路,空圧バルブを有した多層構造の形成に成功した。ペリスタポンプによる送液をPython 3.0により自動的に制御した。20 μm粒子による単一粒子捕獲実験では,駆動周波数 4Hz,駆動時間 90 s,駆動圧力150 kPa,が最適な条件であった。このとき単一粒子の捕獲率は81 %となった。またペリスタポンプを逆流して,ピペット外のフッ素系液体内に単一粒子を吐出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピペットを直列する方式では,流れを安定させることが難しいことを発見した。各ピペットを独立する方式に変化させて研究を進めている。細胞の安定的な配置に関して,根本の革新につながる原理を発見しており,おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
「決定論的超並列単一細胞加工技術」の創成によるバイオ3Dプリンティングの革新を目指し,①ピペットアレイの開発(設計,作製),②ピペットの特性評価(ポンプ流量特性評価,ナノリットル溶液の操作,単一細胞の操作),③セットアップの構築の3点に分けて進める。工程では特に最も難しい光硬化性ゲルで被覆した粒子や細胞を細胞外に吐出する。 前年度までにペリスタポンプを駆動し続けると,フッ素系液体と水溶液の境界で小径の液滴が大量に生成された。このようにフッ素系液体に対し,小径の液滴が生成されるメカニズムを解明する。これまでの仮説では,ペリスタポンプの駆動時に液体が前後し,フッ素系液体が吸引・吐出口から流路内に引き込まれ,粒子懸濁液をせん断すると考えている。3つある空圧バルブを緩やかに加圧して吐出すると,単一粒子は振動せず吐出された。単純にペリスタポンプを動かすのではなく,バルブを同時に動かす方法も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に想定以上に時間を要したため,次年度使用額が生じた。主に実験のための消耗品を中心に使用する予定である。
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