生体外で緻密な多細胞組織を超並列で10の6乗個形成できれば,十分な細胞間相互作用により生体内の状態を再現し,腫瘍や臓器の生命現象を効率的に調査できる。組織構築には,バイオインクとヒト細胞(直径約15μm)の懸濁液を吐出し,硬化後に細胞を成熟させる。従来のバイオ3Dプリンティングの配置は,トレードオフが存在し,高い並列処理数と細胞個数の制御性は両立できなかった。並列ノズルにしても,確率論的な配置となり,個数と距離を厳密に規定できず,細胞間相互作用の安定した再現が困難であり,変革が望まれていた。そこで本研究では,申請者の有する細胞操作技術,微細加工技術をベースに,構造を知能化・2Dアレイ化するアイデアにより,原理を刷新する。決定論的な細胞加工へと飛躍させ,細胞間相互作用の安定した再現を行う。決定論的超並列(10の6乗個)単一細胞加工技術の4工程(A)単一細胞分離,(B)ゲル被覆,(C)ピペットへの充填・吐出,(D)位置固定を創成することを目指した。 前年度にペリスタポンプを搭載し,被覆用チャンバを独立させたピペットアレイを新たに開発した。これには吸引・吐出口,細胞用流路,空圧バルブを有した多層構造の形成を利用した。捕獲や吐出性能は,基板間相互作用が影響を与えることが分かった。そこで本年度はピペットに外骨格と3軸リニアステージを設けて,治具での固定、吐出用の溶液へ移動を可能となるようにした。またこのことにより,z軸方向の距離の制御を可能とし,ピペットとシャーレとの距離すなわち基板間相互作用による影響を調査した。
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