これまでに、マクロファージは、貪食する微粒子に応じて産生する炎症性サイトカイン(IL-6やTNF-α)の量が異なるという知見を得てきた。本年度は、これまでに得た知見を基に、マウスの単球性白血病由来の細胞(RAW264)に対して、特定のサイズの微粒子を投与し、炎症性サイトカインの産生能や生存率を評価する検証を行った。また、このRAW264の培養上清を回収し、マウスのルイス肺がん由来細胞(LLC)に投与した後、がん細胞の生存、細胞毒性をWST-8アッセイやLDHアッセイで評価した。炎症性サイトカインの産生能については、これまでの知見通りにサイズによる依存性があり、産生能が高くなる特定のサイズを明らかにした。また、RAW264の上清をLLCに添加した結果、LLCが有意に傷害を受けることを明らかにした。このがん細胞の傷害が微粒子によるものではないことを確認するために、LLCに対しても各種微粒子を投与する評価を行った。その結果、LLCに微粒子を投与しても傷害されないことを明らかにした。さらに、画像的にLLCの生死判定をするために共焦点レーザー顕微鏡を用いて蛍光観察を行った結果、粒子によって刺激されたRAW264上清を添加したLLCでは死細胞が増加することを確認し、微粒子で活性化されたマクロファージの免疫応答を用いてがんを治療可能であることが示唆された。 一方、ヒトへの適用を考え、ヒトの末梢血から単離した初代マクロファージに対して、各種サイズの微粒子を投与し、炎症性サイトカインの産生量をELISAにより評価したところ、RAW264の結果とは異なる粒子サイズの際に産生量が高くなることがわかった。マウスの細胞とヒトの細胞を用いた結果が異なることを実証した知見であり、今後はヒトの細胞を用いた評価を行う必要があることを明らかにした。
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