研究課題/領域番号 |
20K20972
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹内 伸太郎 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50372628)
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研究分担者 |
大西 領 国立研究開発法人海洋研究開発機構, その他, その他 (30414361)
田川 義之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70700011)
梶島 岳夫 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30185772)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 潤滑 / 非平衡 / 粒子流れ / 液滴浮遊 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、流体中に分散的に存在する界面が近接する際に発生する潤滑が、流れ場全体に及ぶような影響を与えることを、数値計算・実験を通して解析し、代表者が提案した拡張潤滑モデルを通して理解する。 2021年度は、液体中に置かれた溶媒と溶質を透過させる膜に働く潤滑効果が支配的となるような問題を設定し、溶媒・溶質の膜透過流束を高精度に解く数値解法を開発した。ユニークな点は、流れ場の圧力方程式に、膜上における圧力と濃度の不連続量を採りこんだことである。狭い流路内で溶媒と溶質を透過する膜に流路壁と相対速度を与える問題を設定し、波状および円形の膜に対して膜透過流束(溶媒・溶質)が潤滑から受ける影響を解析した。波状膜については、膜透過流束成分の高次成分を含む数理モデルの構築をとおして、膜および流路形状のパラメーターが溶媒・溶質の流束に及ぼす効果を特定した。さらに数値解析解との比較を通してその効果を確認することで、潤滑が非平衡輸送現象に与える影響の一端を明らかにした。 さらに拡張潤滑モデルを移動壁面上の液滴浮遊現象の問題に適用した。浮遊液滴と移動壁面間の空気膜の厚さを拡張潤滑モデルより推定するアルゴリズムを構築し、実験結果と比較した結果、良好な一致を得た。 また粒子混相流における実用的な潤滑アルゴリズムの構築として、物体を10個程度以下の格子で解像する低解像度の境界埋め込み法でも適用可能な簡易な潤滑力補正手法を開発した。本補正手法では、潤滑層補正用のフィルタ格子を導入し、潤滑層を含むフィルタ格子内のみの情報から潤滑力を補正する。2021年度は、実際に補正手法を用いて、接近する2粒子の運動を計算し、潤滑層による反発力および引き込み力を10%程度の誤差という実用的な精度の範囲で再現できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流体による潤滑が支配的であるような場におかれた弾性膜の変形を記述する数値解析を進めてきたが、検証用に構築した数理モデルと比較した際に、モデルが示す非線形性がやや複雑な挙動を示すためモデルの有効性を理解するのに多少の時間を要したが、座標系を工夫することで回避する方法を見出した。 また実用的な潤滑解析手法の中で、浮遊液滴と移動壁面間の空気膜の厚さを拡張潤滑モデルより推定するアルゴリズムを構築し、実験結果と比較した結果、良好な一致を得た。さらに、大容量の浮遊液滴に関しては当初予期していなかった表面波が見受けられたため、追加実験を行い、表面波の特徴を実験的に明らかにした。 移動壁面と浮遊液滴の間に存在する空気薄膜流れに対して、実用的な潤滑力補正手法を開発し、10%程度の誤差で潤滑力の影響を考慮できることを確認できた。 以上より、研究はおおむね順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
拡張潤滑モデルを様々な境界条件(例えば粗さを有する壁面)下の問題へ拡張する予定である。潤滑が支配的な環境下における膜透過問題の数値解法を、三次元問題が扱えるように変更を加えていく。 拡張潤滑モデルに基づき構築した移動壁面と浮遊液滴の間に存在する空気薄膜の厚さを算出するアルゴリズムを、複数の液体や液滴サイズの浮遊液滴に適用し、アルゴリズムの汎用性について調査する。 また、2次元の理想的な条件下において実用的な精度で空気薄膜内の圧力およびそれによる反発力や引き込み力を評価できることを確認できた拡張潤滑モデルを複雑3次元形状に適用していく。まずは、潤滑層を含むフィルタ格子内での物体の局所的な曲率をその格子内の局所情報から推算する機能を導入した場合の計算精度の変化を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
査読を受けている数編の論文についてオープンアクセス出版費(Article Processing Charge)にあてるつもりであったが、査読に時間がかかっているため今年度未使用になった。次年度には予定通り未使用額をオープンアクセス出版費として支出する予定である。
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