研究課題/領域番号 |
20K20973
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
後藤 晋 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40321616)
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研究分担者 |
犬伏 正信 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (20821698)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 乱流 / 機械学習 / 乱流モデル / エネルギー散逸率 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
乱流中の小スケールの動力学や統計は、乱流の種類に依らずに普遍的であることが知られる。したがって、この小スケールの運動をモデル化することで、(実用上より重要な)乱流中の大スケールの運動の解析に注力できる仕組みを提案することが、本研究課題の目的である。この目的を達成するために、乱流中の小スケールの統計で最も重要な量であるエネルギー散逸率εを、乱流中の大きなスケールの情報から予測する方法を構築することを第一段階の目標とした。(1)本年度は、まず、周期境界条件下の乱流に対して、大スケールの情報の代表である運動エネルギーの空間平均値K(t)からエネルギー散逸率の空間平均値ε(t)を機械学習を用いて予測した。ナビエ・ストークス方程式に基づく直接数値シミュレーションによりKとεの時系列を用意する。これらは非自明に時間変動するので、ε(t)の予測は容易ではない。本研究では、機械学習の手法として(学習のコストが比較的低い)リザーバーコンピュータを用いたが、非常によい精度で、Kの時系列からεの時系列が予測できることを示した。ところで、乱流中ではエネルギーが大スケールから小スケールへと伝達すること(エネルギーカスケード)が知られる。つまり、このエネルギー伝達に伴って、情報も大スケール(K)から小スケール(ε)へと伝達するために、このような予測が可能であったと理解できる。(2)ここで、エネルギーカスケードには乱流の種類やレイノルズ数に依らない普遍性があることを思い出す。したがって、低いレイノルズ数の十分に長い時系列を用いて学習した結果を、より高いレイノルズ数における予測に転用(転移学習)できることが期待される。実際、本研究ではこれが可能なことを実証した。以上の結果は、乱流モデル構築に向けた重要な一歩であり、Physical Review 誌に公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度途中からの課題開始であったため、本研究課題の主題に関して(テーマ割り振りの問題から)研究室の大学院生の協力を得ることができなかったことが、研究を加速できなかった原因のひとつである。
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今後の研究の推進方策 |
博士(後期)課程に進学予定の大学院生(修士課程1年)の研究課題を、本研究課題の主題(機械学習を用いた乱流モデルの構築)とすることを提案し、当該学生の了承を得た。これにより研究の進展の大幅な加速が見込まれる。また、研究分担者の犬伏氏は2021年度より東京理科大学に異動となったが、週に一度のオンライン・ミーティングを実施し、これまで以上に綿密な研究打ち合わせをして研究を強力に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、ディスクサーバーの導入を計画していたが、現在選定中であり、導入は次年度に持ち越した。また、学会のオンライン化で旅費が不要となった。さらに、計算機使用料を予算に計上していたが、自然科学研究機構および宇宙航空研究開発機構との共同研究課題としてそれぞれ採択された乱流に関する課題の無償割り当てマシン時間内で上述の研究に必要な数値シミュレーションを実行した。
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