研究課題/領域番号 |
20K20975
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
野村 信福 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (20263957)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 固体2次電池 / ゼオライト / 正極材 / 電解質 / 負極材 |
研究実績の概要 |
電池の実現には、正極、電解質、負極の開発が個別に必要である。第一原理計算による、陽極材、負極材、電解質の最適化計算を行い、大容量の電池を得られる素材の構造設計と、その特性の解析などを計算し、どのような材料を用いれば、大容量化と電池に適する特性を併せ持つ材料になるか予測を行った。次に、この知見をもとに、正極材と電解質の製作を実施した。正極材料としては、アルミニウムの半分を鉄に置き換えたゼオライトを合成した。ソーダライトフレームワークに鉄などの遷移金属を組み込込むことで、リチウムイオンの出入りが可能な理想的な結晶構造を持つゼオライトを合成することができた。ゼオライトの細孔内の負電荷の関係から、鉄(Ⅱ)では細孔内に取り込めるリチウムは2個で、鉄(Ⅲ)では、細孔内に取り込めるリチウムは1個である。この関係が充放電の原理となる。ゼオライト電極の電気容量は骨格構造の質量比率から計算でき、Si/Fe(Ⅱ)=0.5では電気容量406 Ah /kg、Mnや Vを使うと1000 Ah/kgを超えることが明らかになった。より多くの鉄を組み込むためには、コロイダルシリカが完全に溶解する正確な加熱時間を決定する必要がある。電解質としての合成ゼオライトの最終目標はMAP型であるが、既存のNaP1(母液ケイバン比1.67)から始め、母液ケイバン比1.2のゼオライト合成まで行い、このゼオライトのXRD、XRF、陽イオン交換容量を測定した。負極材としては多孔性の炭素材料の合成の検討を開始した。内部空隙を多数有する炭素材料を合成すれば、グラファイトに比べてリチウム原子取り込み量を飛躍的に拡大し、また、リチウム原子の空隙内への出入りも容易になると考えられる。空隙を多数有する炭素材料を合成する鋳型として多孔性のゼオライトを用いる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体2次電池用の正極材と電解質を製作した。特に、正極材料としてアルミニウムの半分を鉄に置き換えたゼオライトの合成に成功した。これによって、鉄以外にマンガンを組み込むことでリチウムイオンの保持量が大きく、リチウムイオンが容易に出入可能な新規ゼオライトが開発できることが明らかになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
正極材は、鉄の組み込みには成功しているが、今年は、鉄をマンガンに置き換えてゼオライト構造への組み込みを行い、高容量の陽極材の開発を行う。固体電解質素材として、ゼオライトの合成を検討する。合成ゼオライトは5~10Å程度の内部空隙を多数有し、電解質として利用すれば、リチウムイオンが自由に空隙内および空隙間を移動することができる。ゼオライトの空隙内は、(0-Al-O)結合に伴う、-1の電荷を有する。そこで、ケイバン比の低い合成ゼオライト(MAP)を得ることができれば、リチウムイオンを空隙内により多く蓄えることができ、電池容量の増大につながる。負極材としては、多孔性の炭素材料の合成を検討する。従来負極材料としてグラファイトのような層状の炭素材料が用いられてきている。グラファイトでは層と層のすき間にリチウム原子を取り込んでおり、Li:Cの比は1:6であり、Liの最大モル数はCの1/6に過ぎない。これに対し、内部空隙を多数有する炭素材料を合成すれば、グラファイトに比べてリチウム原子取り込み量を飛躍的に拡大し、また、リチウム原子の空隙内への出入りも容易になると考えられる。多孔性のゼオライトを鋳型とし、有機溶剤を原料として鋳型を取り囲む炭素材料の合成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で学会の延期や中止、国内の移動ができなかったので、旅費およびその他(諸経費)をすべて削除した。 新型コロナウイルス影響下で継続的に実験を遂行していくために、実験補助者への人件費・謝金に使用していく。
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