研究実績の概要 |
本研究では、完全固体型2次電池を実現するために、ゼオライトの骨格構造に着目し、これを電池の基盤材料とすることを提案し、正極、負極、電解質の材料開発を実施した。正極材料には多孔質の立体構造を持つSOD(ソーダライト)フレームワーク型のゼオライトを用いた。ゼオライトはコバルト酸リチウムと比べ, 空隙率が高くなることで発熱が少なく、価数の変化量の大きな遷移金属を組み込むことができるので容量が大きい。骨格構造の質量比率から計算できる電気容量はFe系で406 Ah /kg、Mn系で1000 Ah/kgを超えることが明らかになった。Feを組み込んだSi-Al+Fe系SODゼオライトの合成には成功したが、Mnをゼオライト構造に組み込みことはまだ完成できていない。負極材料には、ゼオライトの立体構造・多孔性を有する炭素材料の合成を目指し有機溶媒中でゼオライトを鋳型として液中プラズマを用いて行った.液中プラズマを用いた炭化により,ゼオライト細孔内に炭素が存在することや炭素がゼオライト細孔内外に付着することで構造が変化していることが確認された。ゼオライト-炭素複合体が合成できている可能性が示され,合成母液の比率を変更することで炭素の付着位置と付着量が変化できることが明らかになった.電解質材料には、ケイバン比(Si/Al)が小さいほど、Al の割合が増えて、陽イオン交換量が大きくなり、Liイオンの移動を容易にする電解質となることから、ケイバン比が1.07、0.81、0.55の三種のGISフレームワークの合成を行い、合成に必要な条件を明らかにした。これら一連の研究から、完全固体型2次電池の実現にゼオライトが有力な材料であることが示された。
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