研究課題/領域番号 |
20K20976
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森 昌司 九州大学, 工学研究院, 教授 (10377088)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
キーワード | 水電解 / ハニカム多孔質体 |
研究実績の概要 |
これまで伝熱面上にハニカム多孔質体を設置するというシンプルなアイディアで、CHFを従来比300%以上向上させてきた。その原理は、プール水中の発熱面上にハニカム多孔質体を設置し加熱するとハニカム多孔質体底部には気液相変化に伴いメニスカスが形成される。加熱によりそのメニスカス部が蒸発すると強烈な毛管力で伝熱面に液体が供給され、それと同時に、伝熱面近傍で発生した蒸気を迅速にマクロ孔(蒸気排出孔)から排出させる。その結果、気液の循環が一次元的に促進させられるため、大伝熱面においてもCHFが向上した。本研究では、この冷却におけるアイディアをアルカリ水電解の高性能化の適用性について実験的に検討を行った。その結果、以下の結論が得られた。 1.沸騰曲線と水電解特性曲線は、類似の現象で有ることが確認できた。すなわち、沸騰の場合には、熱流束制御の場合においてヒステリシスが観察され、温度制御の場合にはヒステリシスはなく、N字カーブが観察されるが、水電解特性曲線の場合にも全く同様に熱流束制御(沸騰の場合)は、電流密度制御(水電解の場合)、温度制御(沸騰の場合)は電圧制御(水電解の場合)と対応していることが明らかになった。 2.ハニカム多孔質体を電極面上に設置すると水電解特性曲線の限界電流密度点が向上するという興味深い知見が得られた。一方で、ハニカム多孔質体の厚さについても、薄い方が限界電流密度の向上幅が大きい傾向が見られた。これは沸騰における限界熱流束を説明可能な毛管限界モデルを用いて説明が可能である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は、主に沸騰と水電解のアナロジーに着目して研究を進める予定だったが、それ以上に研究が進展し、ハニカム多孔質体により性能向上が得られたため。具体的には以下の内容が得られている。 1.沸騰曲線と水電解特性曲線は、類似の現象で有ることが確認できた。すなわち、沸騰の場合には、熱流束制御の場合においてヒステリシスが観察され、温度制御の場合にはヒステリシスはなく、N字カーブが観察されるが、水電解特性曲線の場合にも全く同様に熱流束制御(沸騰の場合)は、電流密度制御(水電解の場合)、温度制御(沸騰の場合)は電圧制御(水電解の場合)と対応していることが明らかになった。 2.ハニカム多孔質体を電極面上に設置すると水電解特性曲線の限界電流密度点が向上するという興味深い知見が得られた。一方で、ハニカム多孔質体の厚さについても、薄い方が限界電流密度の向上幅が大きい傾向が見られた。これは沸騰における限界熱流束を説明可能な毛管限界モデルを用いて説明が可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、ハニカム多孔質体により限界熱流束が裸面に比べて3倍以上向上する結果を得ている。さらにハニカム多孔質体を設置すると同じ過熱度で裸面に比して熱流束が大幅に高い。これは熱伝達率がハニカム多孔質体により大きく向上していることを意味する。このことはハニカム技術により低電圧で高電流密度で効率的に水電解を起こすことができることを示唆している。そこで、本申請課題では初年度に得られた結果をさらに発展させるため次年度には具体的に以下のことを実施する。 1.ハニカム多孔質体幾何形状がアルカリ水電解の電流電位曲線に与える影響 初年度にはハニカム多孔質体を電極部に設置し、ハニカム多孔質体有無の影響を見てきたので、今年度はハニカム多孔質体の幾何形状(セル幅など)がアルカリ水電解の電流電位曲線に与える影響について実験的に検討を行う。 2.ハニカム多孔質体を用いたアルカリ水電解の限界電流密度向上モデルの検討 上記で得られる結果から,ハニカム多孔質体による限界電流密度向上に関するメカニズムを検討する。 さらに、金属製のハニカム多孔質を用いてハニカム多孔質体自体を電極として用いることでさらなる高性能化を検討していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で実験回数が少なったため。一方で、予想以上に少ない実験回数で良い成果が出てきており、今年度において新たな実験内容も追加することで、研究を加速させ、有効に研究予算を使用する予定である。
|