近年、再生可能エネルギー等の余剰電力を用いた水電解による水素製造が検討されている。大規模な水素製造には初期コストが高いという課題が存在するため、水電解装置をコンパクト化したいというニーズがある。そこで本研究は、熱と物質の移動のアナロジー、すなわち沸騰と水電解の相似性に基づき、これまで限界熱流束(以後、CHF)の向上に成功したハニカム多孔質体を水電解の電極表面に設置することで、水電解の限界電流密度(Critical Current Density、以後CCD)が向上するかについて実験的に検討を行った。ハニカム多孔質体を電極面上に密着させた場合(GAP = 0mm)と電極面とハニカム多孔質体の間にスペーサをおくことで 0.3mm の隙間をおいた場合(GAP=0.3 mm)、GAP=0mmの場合はGAP=0.3 mmよりCCDが約1.5倍向上するという興味深い結果を得た。加えて、実験中CCD点近傍の電極温度は電解質の沸点以下であることから、熱的な沸騰によるものではない。HPPがカソード電極表面に密着している場合(GAP=0㎜)及び電極面から少し浮かした場合(GAP=0.5㎜)においてCCD点近傍における電極面近傍水電解の様子を高速度カメラにより可視化した。その観察により、HPPを電極面から少し浮かした場合(GAP=0.5mm)、CCDで電極面の近傍は沸騰のCHFのように小さい気泡の激しい合体により、電極面に水素気膜が生成され、CCDが発生することが分かった。一方、HPPを電極表面に密着する場合(GAP=0mm)、CCD点で同じく電極面が水素気泡により覆われ給水不足の状況を迎えるが、HPPの毛管力で電解質から電極面への液体供給されCCDが向上したことがわかった。さらに今後は電極構造・材質を工夫し、低電圧で高電流密度化することを目標に検討を行う予定である。
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