研究課題/領域番号 |
20K20977
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
上野 一郎 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 教授 (40318209)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 表面張力差駆動対流 / コヒーレント構造 / 低ストークス数粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では,表面張力差を駆動力とする対流場内に付与した低ストークス(St)数粒子が自発的に集合し,周方向に閉じた特異な粒子集合構造(Particle accumulation structure, PAS)を対象としている.特に,このような低St数粒子群がトポロジー対流場内で自発的に形成するコヒーレント構造の形成過程解明,および,トポロジー対流場とコヒーレント構造を形成する粒子挙動間の相互関係の解明を目的としている.2020年度は,COVID-19感染拡大における入構禁止措置等の影響により,主に数値解析による現象解析および実験データに対する解析コード開発を重点的に行ってきた. 長液柱でのコヒーレント構造発現条件を探索する上で,液柱-周囲気体間の熱損失をパラメータとして,周方向波数mが1となる対流場の発現条件を実験,数値解析および線形安定性解析により定量化した.さらにm = 1のコヒーレント構造が発現する条件を実験的に探索し,その空間的特徴と自由表面上に発現する温度場との相関を明らかにした.また,先行して実施された国際宇宙ステーション日本実験モジュール「きぼう」で得られた実験結果および地上実験で取得した実験結果について,コヒーレント構造の空間的定量化および発現条件について解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は,前述の通り,COVID-19感染拡大における入構禁止措置等の影響により,主に数値解析による現象解析および実験データに対する解析コード開発を重点的に行ってきた. 特に液柱-周囲気体間の熱損失を無次元数であるBiをパラメータとして,周方向波数mが1となる対流場の発現条件を数値解析および線形安定性解析により明らかにした.さらに,マランゴニ効果を大きくすることによって液柱内に発現する非定常対流場において,従来の研究により存在が明らかになっている2種類の対流場(回転振動流および脈動振動流)の発現条件を明らかにした.また,エネルギー解析を用いて対流場発現機構を明らかにした.実験では,液柱周囲気体を強制対流場とすることで熱損失の状況を実現し,熱損失の度合いにより回転振動流および脈動振動流の発現条件が変化することを明らかにした.また,国際宇宙ステーション日本実験モジュール「きぼう」で行われた軌道上実験において,これまでの地上実験・数値解析で明らかにされていなかったm = 1の脈動振動流を,地上実験および数値解析で初めて再現することに成功し,軌道上実験との比較を行った.以上の結果は,学術論文としてすでに掲載されている(Fukuda et al., Int. J. Heat Mass Trans. 173, 2021).また,同じく「きぼう」での軌道上実験で得られたm = 1のコヒーレント構造に対し,地上実験においてその発現条件を探索し,その空間的定量化に成功した(Ueno, Fluids 6, 2021).2020年度では,特にその形成過程に注目し,軌道上実験および地上実験結果に対し定量化を試みた.以上の結果を学術論文原稿としてまとめ,現在査読過程にある.なお,2020年度に予定していた研究協力者との研究打合せにかかる出張は取りやめざるを得なかった.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度から実施している予備的実験により,マランゴニ効果の大きさを変化することによってm = 1のコヒーレント構造が2種類存在することを明らかにしつつある.2021年度はその発現条件を液柱形状およびマランゴニ効果の強さにより体系化し,ポアンカレ断面や粒子追跡速度計測など異なる手法を用いながら,それぞれの空間的構造やその構造を構成する粒子の時空間的挙動の相関を明らかにする予定である.また,研究協力者のグループが行った理想的な対流場を対象とした数値解析によってコヒーレント構造とトポロジカル対流場との相関が示されており,2021年度は実験的アプローチによりその一部を実証することを目的として研究活動を進めていく.なお,採択時の計画では国際会議に参加するための旅費を計上しているが,COVID-19の感染拡大状況を見極めながら研究活動を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大による緊急事態宣言やそれに伴う本学での入構禁止措置,その後の入構自粛措置により,実験的研究の実施,および,開催地への渡航を含む国際学会の発表を停止せざるを得ない状況にあったため,2021年度は実験的アプローチによりその一部を実証することを目的として研究活動を進めていく予定である.なお,採択時の計画では国際会議に参加するための旅費を計上しているが,COVID-19の感染拡大状況を見極めながら研究活動を進めていく予定である.
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