研究課題/領域番号 |
20K20978
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
染矢 聡 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 副研究部門長 (00357336)
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研究分担者 |
李 艶栄 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (20712821)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 燐光 / 圧力 / 可視化 / 強度法 / 寿命法 |
研究実績の概要 |
本研究では大気圧近傍の圧力差の小さい条件における圧力分布の定量可視化計測を実現する従来にない高感度検出法を開発する。従来から行われてきた塗膜の高度化等のPSP高感度化技術は全てそのまま活用でき、検出法の工夫により、大気圧近傍での圧力感度を高める。そのために、①酸素分圧に応答する燐光の寿命と最大発光強度の両方を併用することで、圧力感度の大幅な向上を実現する。参照画像を必要とする方法と必要としない方法の両方を開発する。更に②試験環境条件などを変更して最大感度を得る試験方法を開発する。初年度は主に①を実施した。 燐光の最大発光強度を利用する従来の方法は、酸素分圧一定で一様の静止時の燐光強度分布を参照情報として過渡的な強度分布をこれで規格化して相対的な強度分布を求める。従来の寿命法は金属錯体の励起が終わった直後から燐光から減衰するが、その減衰プロセス中に2枚以上の画像を取得し、時間方向に規格化する。 本研究では、燐光の減衰中の発光強度の積分値を酸素分圧一定で一様の参照条件下で取得し、これを用いて過渡的な条件での積分値を規格化することで酸素分圧を求めた。この方法は参照画像が必要であるが、従来の二倍以上の感度で酸素分圧を測定することに成功した。また、減衰プロセス中の複数画像ではなく、減衰開始前の最大発光強度で、減衰中の発光強度の積分値を規格化することで事前の参照画像がなくても高感度に圧力を求めうることがわかった。 ②については、密閉チャンバーを製作し、内部の酸素分圧が空気とは異なる環境で、センサ分子の圧力感度を評価可能な装置を作成した。2年目にはこれを用いて、通常の空気環境とは異なる環境での圧力計測性能を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸素分圧に応答する燐光の寿命と最大発光強度の両方を併用することで、圧力感度の大幅な向上を実現する。参照画像を必要とする方法と必要としない方法の両方を開発した。 燐光の最大発光強度を利用する従来の方法は、酸素分圧一定で一様の静止時の燐光強度分布を参照情報として過渡的な強度分布をこれで規格化して相対的な強度分布を求める。従来の寿命法は金属錯体の励起が終わった直後から燐光から減衰するが、その減衰プロセス中に2枚以上の画像を取得し、時間方向に規格化する。これらの方法を採用した際の圧力感度を一般的なPSP膜で評価した。評価試験は圧力一定の静止条件と、非定常条件の両方で実施した。 燐光の減衰中の発光強度の積分値を酸素分圧一定で一様の参照条件下で取得し、これを用いて過渡的な条件での積分値を規格化することで酸素分圧を求めた。この方法は参照画像が必要であるが、従来の二倍以上の感度で酸素分圧を測定することに成功した。特に従来測定が難しかった、かつ、本研究の主なターゲットである低圧条件下での測定感度が二倍向上した。 減衰プロセス中の複数画像ではなく、減衰開始前の最大発光強度で、減衰中の発光強度の積分値を規格化することで参照画像を使わずに圧力を計測する方法でも同様に、従来法よりも高感度に圧力を求めうることがわかった。 また、試験環境条件などを変更して最大感度を得る試験方法を開発するため、密閉チャンバーを製作し、内部の酸素分圧が空気とは異なる環境で、センサ分子の圧力感度を評価可能な装置を作成した。
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今後の研究の推進方策 |
試験環境条件などを変更して最大感度を得る試験方法を開発する。初年度に密閉チャンバーを製作し、内部の酸素分圧が空気とは異なる環境で、センサ分子の圧力感度を評価可能な装置を作成した。この容器内の酸素分圧をパラメータとして、様々な圧力条件での計測感度を評価する。周囲ガスが空気の場合は低圧で酸素分圧が小さければ一般的に燐光強度が明るく、圧力感度が高いとされている。分圧の小さいガス雰囲気下では、総じて明るく光るものの、圧力変化に対する分圧変化も小さくなるため、どの程度の高感度化を達成できるか、または全く効果がないかなど、チャレンジしてみなければわからない面が残る。本年度は主として、この特殊環境下で、低速回転機の翼周りの圧力分布計測を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
密閉チャンバーの制作に高額の費用が掛かることを想定していたが、大型のチャンバー試験の前の予備試験として小型チャンバーを導入することとた。小型チャンバー試験の結果を待って、より高い確度で大きなチャンバーを導入することで、確実に成果を得ることを重視した。
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