現在3Dプリンタに共通する大問題の一つはサポート材の除去である.通常,サポート材は機械的に壊すか,熱や溶剤で溶かして取り外すが,どの場合も形状が複雑になると容易には除去できない.そこで氷でサポート部材や鋳型を成形し,液状のゴムを用いて複雑なゴム構造を成形する手法を開発した.水は環境や人体への負荷がなく,かつ常温常圧下で乾かすか,あるいは真空下に置けば容易に除去できる. まず,減圧による水の凝固現象の利用と低温冷却液内での造形を試みた.前者については液相を維持する圧力が高いため吐出時の水速度が速く造形に至らないことがわかった.後者に関しては水の表面エネルギーが大きいため水が固まって吐出されてしまい成形ができなかった. そこで新しく「ブロックアセンブリ法」と名づける成形法を考案した.微小な直方形の氷を製造し,これを積んで3D構造とする手法である.組み立ての際には,氷のブロック表面に液状の水を付着させ,これを氷の造形物に押し付けることにより,表面の水が接着剤の役割を果たし,立体的な氷の造形物が成形できる.実験では,数mm程度の氷の構造体を結合してジャングルジム状の構造体を成形した.ゴムの本体と硬化剤を混合後,冷凍庫内と同じ温度まで十分に冷やしたのちにゴムを注型し,流路を持つ樹脂製の構造体の成形に成功した. 本研究により,立体形状の氷の造形が行えること,また,これを鋳型としてゴムの構造物ができることを実験的に示した.これにより,内部に立体的な微細な流路や空間を持つマイクロTASやマイクロリアクタの展開につなげたい.また,マイクロフルイディックデバイスとゴム製ソフトアクチュエータを本手法で一体成型することによって,自律的に動作するソフトマイクロロボットの実現にも展開できると考えている.
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