研究課題/領域番号 |
20K20983
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
川原 知洋 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (20575162)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 運動性微生物 / 非接触マニピュレーション / インクジェット / マイクロ液滴 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,基板上に維持されたマイクロ液滴に対し,1次元的さらには2次元的な移動を実現するための液滴生成・操作方法に関する学理を構築することを目的としている.本年度は以下のような研究を行なった.
・実験システム構築:事前検討において,基板上の液滴に対して,微量液体の供給位置を変化させることで,連続的な液滴の移動が可能であることを確認したが従来は手動で行っていたため正確な操作や評価が難しかった.そこで,まずインクジェット機構からのマイクロ液滴の射出をPCからのパルス信号で1滴ずつ調整できるように実験システムを構成し,撥水コーティングを行ったガラス基板上に接触する際の挙動を高速度カメラで計測できるようにした.この際,射出と撮影タイミングの同期制御を行うことができるようにソフトウェアを開発した.また,射出位置を変化させるためにXY電動ステージを実験システムに統合し,液滴の着弾位置をサブミクロンの精度で微調整できるようにした.
・液滴挙動の計測:構築した実験システムを用いて,個々のマイクロ液滴の着弾の様子や液滴同士の結合の様子を観察した.この際,高速度カメラの設定を10,000 FPS程度にすることで,液滴の形状がダイナミックに変化してから整定する様子が確認できた.さらに,この影響による誤差を踏まえた上で,2つの直径数100ミクロンの液滴をガラス基板上に初期配置した後に,その間に液滴を射出することで液滴結合して,液滴を移動させることが可能であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インクジェット機構,高速度カメラ,電動ステージ,ロボット顕微鏡といった各要素を統合し,リアルタイムかつ高精度に計測と制御が可能な実験システムを構築することができた.これにより,従来は手動で行っていた実験が高精度に行えるようになり,液滴操作も10倍以上の効率で実施できるようになった.以上のような成果により液滴移動戦略構築のための液滴の振る舞いに関する基本原理を実験的に確認することができている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,液滴挙動から数理モデルの構築を試みるとともに,より移動距離を稼ぐための液滴射出方法を探索する予定である.また,実際に微生物を含む液滴を基板上で移動させる実験にも挑戦する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により,実験の実施に影響が出たほか学会等の出張や雇用計画に大幅な変更が生じたため,研究計画を修正した.次年度も学会等への参加や出張はオンラインになると想定されるため,新型コロナウイルスの影響を考慮して実験をより多く行うような計画へと軌道修正し,着実かつ有効的に助成金が使用できるよう研究を推進する.
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