本研究課題では,基板上に維持されたマイクロ液滴に対し,1次元的さらには2次元的な移動を実現するための液滴生成・操作方法に関する学理を構築することを目的としている.本年度は以下のような研究を行なった.
・液滴の精密制御:前年度開発した実験システムを用い,これまではセミオートであった液滴の射出位置制御を完全に自動で行えるようにした.これにより,高速かつ精密に液滴を連続的に基板上に配置できるようになった.また,このような実験系を構築したことにより,ターゲット液滴(複数液滴から構成)の近傍にアンカー液滴(1滴のみ)を精密に配置することができるようになり,射出位置を最適な位置に調整すると全体の移動距離を大幅に向上させることが可能であることを新たに見出した.
・液滴マニピュレーション:以上のような知見を踏まえ,実際に射出した液滴を画像処理によりリアルタイムに認識し,自動的に液滴を操作する方法を開発した.これにより,直径が数100ミクロンのターゲット液滴を乾燥させることなく(液滴の直径を維持しつつ),1滴分の純水をインクジェット機構から数ミクロンの位置決め精度でずらしながら自動供給することで,撥水加工を行ったガラス基板上において1次元的かつ連続的に液滴を操作できるようになった.また,この際に液滴配置が失敗した場合でも,それを自動検知し,リカバーするアルゴリズムについても開発を行った.今後はすでに開発している2軸の自動ステージを用いて,液滴を基板上で2次元的に操作したり,複数液滴を並列マニピュレーションする方法へと発展させ,最終的には微生物を用いた実験を行う予定である.
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