研究課題/領域番号 |
20K20988
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤澤 剛 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (70557660)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 螺旋ツイスト / フォトニック結晶ファイバ / 幾何位相 / 光空間状態 |
研究実績の概要 |
R2年度は、研究実施計画記載項目のうち、以下の3点について検討を行った。 1.シングルモード、螺旋ツイストPCF内の偏光状態解析:シングルモードの場合のツイストフォトニック結晶ファイバ(PCF)の偏光状態の検討を行った。コア周囲の一部の空孔の大きさを変えることで、ファイバに複屈折性をもたせることで、ツイスト構造の中で幾何位相を獲得できるようにし、その際の偏光状態を、申請者が開発した独自ビーム伝搬解析技術を用いて、詳細に解析した。その結果、単純にツイストしたPCFにおいては、90度回転ごとに、幾何位相により励振された円偏光成分が最大になり、次の90度回転でもとにもどることを発見した。この円偏光成分の励振量は複屈折の大きさに依存することも明らかにした。さらに、この現象の物理的理解を深めるために、簡易な解析式に基づくツイスト導波路中の偏光状態解析技術を開発し、独自ビーム伝搬解析技術とよく一致する結果を得た。 2.周期的ツイスト反転PCFによる任意偏光状態生成の研究:1の結果をもとに、ツイストを周期的に反転した場合の、ツイストPCF内の偏光状態について詳細な調査を行った。申請者の予想通り、90度回転して、円偏光成分が最大になったところで、ツイスト方向を反転することで、励振される円偏光成分が積み重なっていくことを独自ビーム伝搬解析技術により実証した。 4. マルチコア螺旋ツイストファイバ内の光空間状態解析とデバイス応用探索:結合型マルチコアファイバと呼ばれるマルチコアファイバ中で、一定の曲げ、ツイストの摂動を加えた際に生じるモード変換現象について理論的な調査を行った。ツイスト率が、所望の二つのモードの伝搬定数から算出される結合長と同程度になるとき、その二つのモード間で変換が生じることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実施計画に記した4つの内容のうち、最初の二つについては、ほぼ実施計画通りの成果を得た。また、4つ目の内容は初年度には実施しない予定だったが、前倒しで検討をすることができた。よって、当初の計画以上に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
シングルモードツイストPCF内の偏光状態については、ほぼ実施計画通りの計画を得ることができた。より詳細な検討を進めながら、実施計画のとおり、ツイストマルチモードPCF内の光空間状態解析とデバイス応用探索に移っていく。マルチモードにおいては、偏光状態がベクトル的になり、より複雑な光空間状態を有するため、まず、その偏光状態を可視化できる理論を確立する。また、計算機負荷の大きいビーム伝搬解析に代わる、より簡易な光空間状態解析法の検討を行う。そのうえで、マルチモードPCF内での自由な光空間状態を生成するファイバ構造を探索する。 マルチコア螺旋ツイストファイバ内の光空間状態解析とデバイス応用探索に関しては、前年度の検討結果をもとに、より効率的なモード変換が可能なファイバ構造、また、変換モード数の増加について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
挑戦研究の交付内定が7月30日であり、研究のスタートが遅れたこと、また、コロナウィルス対応のための、必要部品の需要逼迫、業者の選定、仕様の策定にこれまでよりも時間がかかったことが原因である。本研究では、ツイストファイバ解析のための、大規模計算機システムの構築を行うとともに、ファイバの透過光測定のための自動調芯装置の導入を計画しているが、前者については、交付内定後、R3年度に行う予定のマルチモードツイストPCF構造に対応可能な計算機サーバー構成の検討を進め、その構成も特定したが、発注の段階になって、発注先のヒューレットパッカード社より、当初予定していたAMD社のCPUが年度内の調達不可になったとの連絡があった(コロナウィルスによる、半導体部品の需要逼迫のためと思われる)。その後、別構成での検討を進め、その構成をすでに特定しており、R3年度前期に導入予定である。また後者についても、コロナ対応等で、業者の選定、仕様の策定に時間がかかり、R2年度内に発注を行ったが、納品がR3年度になった(なお、2021年4月に納品済みである)。
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