R4年度は、研究実施計画記載項目のうち、以下の点について検討を行った。 3. マルチモード、螺旋ツイストファイバ内の光空間状態解析とデバイス応用探索:前年度に発見した、特定の周方向次数を有するモードの縮退が、そのベクトル界分布の形状を保ったまま破れる現象(自発的縮退の破れ)を用いて、任意の高次モードを、光軌道角運動量(OAM)モードへと変換するファイバ構造を考案した。具体に、リング状コアの周囲に、変換したいモードの次数に応じた空孔を円周上に配置することで、特定の高次モードの縮退を破る空孔アシストリングコアファイバを考案した。前年度までに開発した、マルチモード、螺旋ツイストファイバのための偏光状態可視化技術により、線形偏光モードからOAMモードへの変換が可能であることを見出した。 研究期間全体を通して、らせん状にツイストするファイバ内で生じる幾何位相を用いて、任意のOAMモードを発生させるファイバ構造の考案に成功した。その過程で、らせん状にツイストするファイバ内での偏光可視化技術として、高次ストークスパラメータ、高次ポアンカレ球を導入し、従来のビーム伝搬法に比べて、より簡易な偏光状態解析法である固有モード伝搬法を開発した。これらを用いて、シングルモード、ツイストフォトニック結晶ファイバ(PCF)の偏光状態解析を行い、周期的にツイストを反転することにより、任意の偏光状態を作成できることを明らかにした。さらに、マルチモード、ツイストPCF内の偏光状態の解析により、自発的縮退の破れ現象を発見し、幾何位相を用いて、マルチモードの場合にも任意の光OAM状態が生成可能であることを突き止めた。ツイストPCFでは特定の次数の高次モードのみ、OAM状態を生成可能であったが、自発的縮退の破れのメカニズムを看破し、任意の次数のOAM状態を生成可能な、空孔アシストリングコアファイバ構造を考案した。
|