研究課題/領域番号 |
20K20991
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小室 淳史 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (70733137)
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研究分担者 |
寺本 慶之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (00635328)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / 火星環境 / 酸素生成 / 二酸化炭素分解 |
研究実績の概要 |
本年度は前年度から引き続き放電チャンバーの製作と実験システムの構築を行い、実際に放電を発生させて各種計測を行った。前年度では放電チャンバーを冷却するために液体窒素を導入するところまで進めたが、それだけでは冷却効率が非常に悪かったのでチャンバーを二重構造にすることで断熱性を大幅に改善させた。さらに、液体窒素の導入経路を再考して冷却効率を改善し、また低温リークを防ぐためにフランジのシール材質を変更した。その結果、放電空間のガス温度を最大で140 K程度にまで下げることに成功した。次に、実際に放電チャンバー中でストリーマ放電を発生させ、様々な温度環境下における放電特性を計測した。雰囲気ガスとしては計測実績が豊富な乾燥空気を用いた。計測パラメータとしては放電電圧、電流波形である。チャンバー内の圧力を一定に保ったまま、ガス温度のみを下げていくと放電開始電圧が上昇し、放電が発生しにくくなった。これは低温にすることで圧力が一定の元でもガス密度が大きくなり、結果として換算電界強度が減少したためである。次に、低ガス温度化でガス圧力も下げ、ガス密度を室温と同じになるように調整したうえで放電エネルギーを計測し、大気圧室温環境下での結果との比較を行った。その結果、同じガス密度であっても低温低圧環境下の方が放電エネルギーが小さくなることが分かった。この結果は、低温環境下では放電の相似則が必ずしも成立しないことを示唆している。現在は、放電エネルギー以外のパラメータにおいて相似則が成り立つかどうかを調べるために、放電発光観測を行うための準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は前年度に引き続き放電チャンバーの製作と実験システムの構築を行った。低温かつ低圧の特殊環境を真空チャンバー内で実現するために、チャンバーの断熱構造を工夫し、液体窒素の導入経路を最適化した。そして、完成した実験システムを用いて放電実験を行い、低温環境下における放電エネルギーの特性を計測することに成功したため、研究はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、これまでに構築した実験系を用いて低温環境下における放電の基礎特性の計測を進めていく。初めは計測実績が豊富な乾燥空気環境下で放電エネルギーや放電発光の計測を行い、ある程度特性が分かってきた後に本研究で主題としている二酸化炭素中における放電の計測を行う。低温環境下における二酸化炭素放電の特性がある程度明らかになったところで、二酸化炭素の分解実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
チャンバーの固定と電極の製作に関連する消耗品の購入代金を節約できたために、計画と実際の使用額に差が生じた。差額はチャンバーの冷却系を高性能化するために有効に活用していく。
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