有機溶媒中で生成した液中プラズマによるナノ炭素材料合成プロセスにおいて,液中の気泡の存在は,放電の形成および合成された炭素材料の諸特性に影響すると考えられる。本研究では,電界印加によって気泡を微細化するエレクトロスプレー法と,ホモジナイザを用いた超音波キャビテーション法による微小気泡の生成を試行し,有機溶媒中では超音波キャビテーションの方が,安定して微小気泡生成が可能であることを確認した。そこで,ホモジナイザ電極を接地電極として用い,その先端から0.3 mmの間隔をあけて高電圧電極であるニッケル棒をキシレン中に設置し,電極間に両極性パルス電圧を印加することで液中プラズマを生成した。ホモジナイザの駆動により,微小気泡とともに液流が発生する。ホモジナイザの駆動電力を変化させて液中プラズマを生成し,合成された炭素材料の比較を行った。ホモジナイザの駆動電力が大きく速い液流が電極間に生じている条件で得られた炭素材料の比表面積は403 m2/gであり,駆動電力が小さい条件の1.7倍の比表面積が得られた。また,電極材料であるニッケルがナノ粒子として炭素材料に含まれていることを確認できたことから,超音波キャビテーションを併用した液中プラズマプロセスによって,ニッケルナノ粒子が担持された比表面積の大きい炭素材料をワンステップで合成可能とした。また,得られた炭素材料の触媒性能を,酸素還元反応の触媒として用いて評価したところ,高速液流の導入によってオンセット電位が-0.171 Vから-0.135 Vへと増加した。さらに,1000度での高温処理を行うことによって,オンセット電位が-0.083 Vへと大きく向上することが確認された。
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