体内に埋め込まれる医療機器が急速に発展しており、nmからμmオーダーのバイオナノマシンやドラッグデリバリーシステムへの展開が期待されている。これらのインプラント機器は互いに通信を行い協調的に動作する必要があるが、これまでのインプラント機器において実用化された通信技術のほとんど全てが電磁波を基本とした無線通信である。しかしながら、電磁波による無線通信では送受信アンテナサイズが原理的には波長(周波数の逆数)で決定されるため、μmからnmオーダーのナノマシンへの適用は極めて困難であり、電磁波による通信ではなくこれまでにない新しい媒体を介した通信技術の確立が必要不可欠である。本研究では特にバイオナノマシンやドラッグデリバリーシステムへとの親和性が高い性質を持つ拡散型分子通信技術に着目した。 本年度は前年度に引き続き複合物理シミュレータの協調解析により拡散型分子通信における分子の化学反応や粒子拡散の数値モデルの検討を行い、特に複数アンテナ伝送の要素を分子通信方式に取り込める可能性について特性評価を行い、MIMOによる分子通信の特性向上性を確認した。
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