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2020 年度 実施状況報告書

光-物質ハイブリッド状態を用いたニューロモルフィック機能の創出と高度化

研究課題

研究課題/領域番号 20K21000
研究機関京都工芸繊維大学

研究代表者

山下 兼一  京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (00346115)

研究分担者 高橋 駿  京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 助教 (60731768)
稲田 雄飛  京都工芸繊維大学, 材料化学系, 助教 (90770941)
研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワードポラリトン / ニューロモルフィックデバイス / 有機半導体 / ペロブスカイト
研究実績の概要

本研究では、集積性と低消費電力性に優れたニューロモルフィックデバイスの創成に、光子と励起子の結合量子状態(ポラリトン)を利用した新概念により挑戦する。
今年度の成果として、まず、活性層材料として鉛ハライドペロブスカイトを使用した微小共振器を溶液プロセスにより作製することに成功した。これまで報告がある手法と異なる点として、貧溶媒を効果的に用いる手法を考案し、成長されたペロブスカイト結晶を再溶解させずに成長継続させることを達成した。作製した微小共振器素子において、光励起下でのポラリトン凝縮の発現を確認した。また、マイケルソン干渉顕微分光を可能とする新しい光学実験系の構築により、凝縮相の空間コヒーレンス形成が実証できた。以上の成果により、ポラリトン凝縮相のニューロモルフィック応答の評価を多面的に行うことが可能になった。この材料系での室温での凝縮相生成の物理メカニズムを明らかにし、近日中に学術誌への論文投稿予定である。
一方、強い遷移双極子モーメントを示す有機半導体の一つであるBP1T-CNを活性層とした微小共振器において、詳細な時間分解フォトルミネッセンス測定により、閾値以下での励起密度における緩和ダイナミクスを明らかにした。励起子性のリザーバー準位からハイブリッド性のポラリトン状態への遷移には、光子状態を介した過程と励起子状態を介した過程が共存することが分かった。終状態であるポラリトン準位の励起子性が強い場合に励起子を介した遷移レートが増大することから、ポラリトン状態の「離調度」を調整し、光子性と励起子性を等価にすることが低閾値化に有効になると考えられる。以上の成果は学術論文として投稿済みである。
さらに、3軸駆動ピエゾステージを購入し、ポラリトン凝縮相の空間分布および離調度調整を可能とする光学測定系の構築を順調に進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

補助事業期間中の研究実施計画としてあげていた事項である「室温で安定にポラリトン生成可能なマイクロキャビティシステムの追究」については、鉛ハライドペロブスカイト単結晶を用いた微小共振器の新たな作製手法を考案したことにより、長寿命で広範囲な凝縮相生成に向けて見通しのある一つの手段を得ることができている。この他にも、真空蒸着やバルク結晶成長からの剥離法なども平行して検討を進めており、おおむね順調に進展していると言える。一方、有機分子結晶を用いた微小共振器では、本質的な材料特性によりポラリトン凝縮の低閾値化はなかなか難しいことが明らかになってきており、今後はペロブスカイトに軸足をおくことになる見込みである。
もう次のステップの事項として位置づけている「ポラリトンの位置選択励起生成とニューロモルフィック機能の実証」については、マイケルソン干渉顕微分光システムの構築が完了したことにより、おおむね順調に進んでいると言える。ポラリトン凝縮相を広範囲で生成/操作/評価可能とするために、デバイス作製と測定系の改善は滞りなく実施している。

今後の研究の推進方策

次年度は研究計画上の最終年度となるため、計画の後半部分である「ポラリトンの位置選択励起生成とニューロモルフィック機能の実証」を重点的に実施する。これらの実施のために、多元スパッタ成膜装置、高品質な励起レーザ光源などを購入する(別予算)。まずスパッタ装置の導入により、高品質(高Q値)な微小共振器の作製を可能とする。高品質なペロブスカイト結晶の成長も引き続き実施し、これらの技術を組み合わせることにより、ポラリトン凝縮の低閾値化を検証する。また、高品質なレーザ光源の導入により、空間的に広範囲で均一な光励起を可能とする。これにより、ポラリトン凝縮相を空間選択的に制御発生させ、光励起入力に対する凝縮相波動関数の空間コヒーレンス変化を、マイケルソン干渉顕微分光システムにより観察する。励起位置や強度をパラメターとした系統的測定により、このシステムをパーセプトロンとしてモデル化する。

次年度使用額が生じた理由

紫外レーザ拡大光学系の構築を次年度に回したこともあり、主に光学系部品に関して、想定していたよりも今年度の消耗品費が少なくなった。この分は次年度に使用予定であり、全体としての使用計画に変化はない。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)

  • [国際共同研究] ケンブリッジ大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      ケンブリッジ大学
  • [国際共同研究] 中国科学院(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      中国科学院
  • [雑誌論文] Comprehensive Photophysical Properties of Thiophene/Phenylene Co-oligomers Investigated by Theoretical and Experimental Studies2020

    • 著者名/発表者名
      Kong Jie、Zhang Wei、Guo Yuanyuan、Niu Xinmiao、Yamao Takeshi、Yamashita Kenichi、Xia Andong
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry C

      巻: 124 ページ: 18946~18955

    • DOI

      10.1021/acs.jpcc.0c06311

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Dry-wet hybrid deposition of wide-bandgap mixed-halide perovskites for tandem solar cell applications2020

    • 著者名/発表者名
      Kanbe Shota、Kagae Junta、Murota Ayane、Hara Yuya、Fujiwara Kentaro、Yamashita Kenichi
    • 雑誌名

      Applied Physics Letters

      巻: 117 ページ: 171901~171901

    • DOI

      10.1063/5.0029784

    • 査読あり
  • [学会発表] 鉛ハライドペロブスカイト微小共振器における励起状態ダイナミクス2021

    • 著者名/発表者名
      山下兼一
    • 学会等名
      レーザー学会学術講演会第41回年次大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 有機発光材料によるオープンキャビティVCSELの動的波長チューニング2021

    • 著者名/発表者名
      平尾司、 田口巴里絵、原優也、山下兼一
    • 学会等名
      レーザー学会学術講演会第41回年次大会
  • [学会発表] 小型波長可変レーザーへの応用のためのグラフェン量子ドットにおける広帯域光増幅効果2021

    • 著者名/発表者名
      原優也、長房司、山下兼一
    • 学会等名
      レーザー学会学術講演会第41回年次大会
  • [学会発表] 全無機ペロブスカイト単結晶を活性層とする微小共振器の発光特性2020

    • 著者名/発表者名
      上田悠介、榎本柊生、田上智哉、藤原健太郎、高橋駿、山下兼一
    • 学会等名
      第81回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] 有機系光機能材料による微小共振器科学の新展開2020

    • 著者名/発表者名
      山下兼一
    • 学会等名
      筑波大学物質科学・学術融合セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 光学顕微鏡マイクロマニピュレーターで作製したカイラルフォトニック結晶における量子ドット円偏光放射の観測2020

    • 著者名/発表者名
      伊藤誠野、高橋駿、山下兼一、舘林潤、岩本敏、荒川泰彦
    • 学会等名
      第5回JSAPフォトニクスワークショップ
  • [学会発表] 広帯域光増幅特性を有するグラフェン量子ドットの作製と評価2020

    • 著者名/発表者名
      長房司、原優也、山下兼一
    • 学会等名
      第5回JSAPフォトニクスワークショップ

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公開日: 2021-12-27  

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