研究課題/領域番号 |
20K21002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 晋也 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (30725049)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | ホイスラー合金 / 強誘電体 |
研究実績の概要 |
本提案は、研究代表者が最近実現している「強誘電体上への高スピン偏極率強磁性ホイスラー合金薄膜の低温・単結晶合成と磁性のゲート電圧制御」を基軸とし、従来のスピントロニクス技術と親和性の高いホイスラー型ワイル半金属を強誘電体上へ薄膜として作製する技術を開発し、そのトポロジカル状態のゲート電圧制御の実証を目指している。 本年度は、ワイル半金属と予測されているホイスラー合金Ti2MnAlの薄膜作製を試みた。研究代表者のこれまでのAlを含むホイスラー合金の作製の研究を参考に、TiとMnの供給比を2:1に固定し、Alを過剰に供給してTi2MnAl薄膜の作製を試みた。しかし、X線回折法を用いた構造評価から、ホイスラー合金相の形成は確認されず、組成解析の結果から、膜中の組成はTi-poor、Al-richであり、化学量論組成比から大きくズレていることがわかった。そこで、この結果を基に、元素の供給比を更に大きく変更してTi2MnAl薄膜の作製を試みた。その結果、組成ズレの改善に成功し、ホイスラー型の結晶構造を有するTi2MnAlが得られた。しかし、磁気モーメントの大きさは理論値から、ワイル半金属特有現象観測のため電気伝導特性としてホール測定及び磁気抵抗効果の測定を行ったが、大きな異常ホール伝導度、巨大な磁気抵抗比、カイラル異常由来の負の磁気抵抗比などの観測はできなかった。これらの測定結果から、ワイル半金属特有の磁気輸送特性観測のためには,結晶規則性の改善が重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非化学量論組成比蒸着法により組成比がほぼ化学量論組成比のTi2MnAl薄膜の合成に成功したものの、ワイル半金属特有現象観測のため電気伝導特性は観測されなかった。今後解決すべき点に検討はついているものの、当初の研究計画より遅れているため、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ワイル半金属特有現象の観測を目指し、Ti2MnAl薄膜の結晶性の改善を検討する。並行して、ワイル半金属と予測されている他のホイスラー物質の検討を進め、筋の良い材料に絞って最終目標とするトポロジカル物性の電界制御を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、研究計画にやや遅れが見られている。これまで検討してきたホイスラー型の候補物質以外も検討を進め、ワイル半金属特有の磁気伝導特性の観測を早期に目指す。薄膜成長・物性評価に必要な強誘電体基板・寒剤費用、薄膜の構造解析を行うための分析費用に充てる。
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