研究課題/領域番号 |
20K21005
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
尾崎 信彦 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (30344873)
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研究分担者 |
池田 直樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, 主任エンジニア (10415771)
小田 久哉 公立千歳科学技術大学, 理工学部, 准教授 (60405701)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | フォトニック結晶導波路 / テラヘルツ波源 / 差周波発生 / 量子ドット |
研究実績の概要 |
本研究は、半導体ナノフォトニクス材料を用いた超高効率テラヘルツ波源の提案とその原理実証を目的とする。具体的には、人工的に光分散関係を制御したフォトニック結晶導波路と、近赤外波長帯で広帯域な発光を示す半導体自己組織化量子ドットとの融合により、非線形光学現象である差周波発生を高効率に誘起し、超小型で波長可変なテラヘルツ波源への応用を目指す。半導体薄膜に周期的な空孔配列を設けて作製される2次元のフォトニック結晶導波路は、空孔の構造パラメータにより導波路内のモードの分散関係を制御することが可能である。この特性を利用して導波路伝播光の群速度および群速度分散を制御し、2つの周波数の伝播光が低群速度かつ低分散となるGaAsベースの2次元フォトニック結晶導波路を実現するとともに、その内部に埋め込まれた量子ドットの発光を利用して高効率かつ波長可変な差周波発生が期待できる。 研究初年度である2020年度は、2次元フォトニック結晶導波路における光分散関係を制御すべく、数値計算シミュレーションを中心に行い、所望の光波長において高効率かつ波長可変な差周波発生が得られる導波路構造の最適化を行った。平面波展開法によるフォトニックバンド計算により、フォトニック結晶導波路の群速度分散を求め、広帯域な低分散特性と低群速度を両立する構造設計を図った。その結果、最大約3THzの差周波が得られる低群速度・低分散導波路構造を求めることができた。その構造に対し、有限差分時間領域峰による電磁波の伝播シミュレーションを行って差周波発生強度の見積もりを行った結果、バルクGaAs導波路に比べ、二桁以上の強度増大が確認され、提案した手法の有効性が示された。今後この最適化構造を基に、高効率テラヘルツ波源の実験的な検証を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、実験や出張が実施困難な状況が断続的に発生したため、当初予定していたスケジュールから遅れが生じた。しかしながら、オンラインでの打合せや、数値シミュレーションによるフォトニック結晶導波路の構造最適化など、実地での実験以外に実施可能なことを中心に研究を進め、年度後半に本格的に実験が実施できるようになってからは、予定していた半導体薄膜成長などを実施できた。一方で、成長した薄膜に対するフォトニック結晶導波路の試作と光学評価は翌年度に持ち越すことになったため、全体の研究進捗状況としては、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2020年度に数値シミュレーションで有効性を確認したフォトニック結晶導波路構造の試作および光学評価を中心に研究を進めていく。構造最適化により得られた低群速度・低分散フォトニック結晶導波路からの差周波発生を実験的に検証し、本研究の目的である、半導体ナノフォトニクス材料を用いた超高効率波長可変テラヘルツ波源開発の可能性を実証すべく、引き続き研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況で述べた通り、2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、当初予定していた実験や出張を大幅に縮小せざるを得なかったため、次年度使用額が発生した。2021年度には2020年度に予定していた光学実験用装置を購入し実験を進めていく。また、可能な限り出張実験を実施し、当初予定していた内容を実施すべく研究を推進していく。
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