研究課題/領域番号 |
20K21006
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
永松 謙太郎 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 准教授 (40774378)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 高温結晶成長 / 深紫外LED / 窒化物半導体 |
研究実績の概要 |
本研究は深紫外LEDの長寿命化のためのAlNの低転位化に関する高温成長手法のアプローチを実現することを目的としている。シミュレーションと高温成長の成長パラメーターと整合性を得ることで実験の精度を高める手法を提案した。また、流体シミュレーションでは考慮しきれないサファイア表面での情報が成長にどのように影響するかが重要になると判断した。 サファイア基板の詳細な情報と成長したAlNにおいてこれまでの低温成長と異なり、特異的な相関があることを見出し、さらにこれを考慮することで、シミュレーションでの結果との間の整合性を高めることを成功した。これにより高温成長においてサファイアを基板として用いることで発生していた根本的課題に対して対応が可能となった。 昨年はAlN成長を高温で行うことで、これまでのAlN結晶成長では見られなかった新たな特徴について学会発表を行い、第68回応用物理学会春季学術講演会において本内容に関する4件の口頭発表を行ったが、今年は基板情報による影響などさらに詳細な検討について発表を行った。具体的には、第82回応用物理学会秋季学術講演会において「インバージョンドメインの抑制による高品質AlN成長手法の確立」、第50回日本結晶成長学会「気相反応を抑制したMOVPEにおけるAlNのV/Ⅲ比依存性」、第69回応用物理学会春季学術講演会における「低オフ角サファイア基板を用いた高温AlN成長におけるV/III比依存性」、「高温有機金属気相成長法におけるAlNの特異的なステップバンチング」と継続的に本内容での口頭発表を4件行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究での令和4年度の目標としては、シミュレーションにおけるパラメーターと高温でのAlN成長との整合させることにしたが、実際にはAlNの成長膜厚などシミュレーションと高い整合性を得るだけにとどまらず、流体シミュレーションでは、想定できない基板の情報の影響を調査し、その影響を実験結果の考察に用いるところまで至った。 具体的には、数値流体シミュレーションを用いてジェットエンジン構造を持つ有機金属気相成長装置をモデリングし、AlNの実際の成長条件に合わせてシミュレーションを行い、成長速度が成長条件に伴い同様の傾向を示しており、値自体もシミュレーションから導出されたデータとほぼ等しい値を示すところまで詳細な補正係数の導出を実現した。また、基板として用いるサファイア基板のオフ角をc軸から0度から1度まで傾けて高温成長を行い、従来の成長温度と高温成長ではサファイア基板のオフ角に対する影響が異なることが明らかになった。 上記のようにシミュレーションを用いた成長の予測を行いつつ、実際の高温成長について詳細なデータおよび高温成長での特徴が見出された。シミュレーション結果と実際の高温成長手法によりAlNの開発が加速しており、本手法の有用性が示されたため令和3年度の評価は「概ね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度までに1500℃でのAlNの結晶成長が実現しており、成長条件に対する影響および基板のオフ角など多くの評価を実施した。また、数値流体シミュレーションと高い整合性が得られたことによって結晶成長の開発速度が加速するまでに至っている。 以上の状況から最終年度である令和4年度は1700℃を超える超高温での結晶成長を実現すると伴に1500℃以上の温度で安定的な結晶成長を実現させ本手法の優位性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
4月納品分の物品があったため今年度の予算としては計上できていないが、予算全体としては、予定通りの運用となっている。
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