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2020 年度 実施状況報告書

インビジブルシティ(見えない都市)のエモーショナルな「見える化」まちづくり

研究課題

研究課題/領域番号 20K21017
研究機関筑波大学

研究代表者

谷口 守  筑波大学, システム情報系, 教授 (00212043)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2023-03-31
キーワードサイバー空間 / ハイブリッドシティ / 見えない都市 / コロナ / 感情
研究実績の概要

まずはじめに、スマホやSNSの普及に伴い、目に見えない形で拡張するインビジブルシティの実態、新技術、および既存実空間(コンベンショナルシティ)の縮退を関連文献、および関連学会の論文、委員会資料・白書等を通じて把握した。そのうえで喫緊の課題としてコロナによるコンベンショナルシティとインビジブルシティの関係性に急激な変化が生じている現状をまずとらえるための調査準備を行った。また、そのメカニズムの解明を実データの解析を通じてパイロットスタディとして実施した。具体的には迅速な研究対応を行うため、ケーススタディとしてCovid-19感染拡大が一定の拡がりと収束を見せた中国において、ツィート空間においてどのような情報と意識の展開がなされたかを時系列的に追跡している。特につぶやきを感情(エモーション)に連動させて見える化するために、KHcoder等を活用し、ブルチックの感情の輪等への結果の投影を通じて、その動向を明らかにしている。
また、我が国においてもCOVID-19の感染拡大の影響がインビジブルシティの伸長に大きな影響を及ぼしたため、国土交通省と共同することで、個人の生活行動の変遷をダイアリーデータとして確保した。分析としてはまだ初歩の段階であるが、緊急事態宣言による弾力的な行動変化と、オンライン化の動向を結果的に明瞭に捉えることができた。
さらに、インビジブルシティは実空間での活動を単に代替するのではなく、潜在的な欲求のつながりの中で活動が連鎖していることを先行研究で明らかにしている。Covid-19感染拡大下での条件において、サイバー上でのつながりが実空間上でのつながりにどうつながっていくかを検証するため、都市から地方への移住行動の源泉となる関係人口に着目した検討を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Covid-19感染拡大の影響により、当初予定していた調査出張が実施できず、あわせて入手すべきデータに関する精査が予定どおり進まなかった点は残念であった。また、都市計画学会や土木計画学研究発表会など主要な学会がすべてオンライン開催となった結果、関係研究者間のセレンディピティを伴うような意見交換を行う機会も十分持てたとは言えなかった。その一方でこの予期せぬ状況が一つの実証実験の場として極めて貴重な新たな環境を提供しており、むしろ本研究が課題視していたインビジブルシティの意義と課題がオンライン化や行動変化を通じてより鮮明な形で検証できる状況となっている。
このような状況に柔軟かつ迅速に対応を行い、研究業績の概要において記載したパイロットスタディとして実施した、世界で最初にCOVID-19の感染拡大・収束が生じた中国におけるツイート分析に関しては、現在審査付き論文として外部投稿中である。この分析においては当初の研究計画どおり、ツイートを通じての感情変化を時系列的に追跡しており、その収束過程においてはネガティブよりポジティブな感情表現が多出することが明らかになっている。キーワードレベルの分析でその共起性については十分な分析ができたと考えるが、文脈の中での検討は今後の課題といえる。また、サイバー空間と実空間の間の相互作用については一層の検討が必である。
また、関係人口を通じたインビジブルシティの検討においては、まずそもそも関係人口自体の全体像が明らかになっていないため、国土交通省や関係機関と協力して実施した大規模調査の結果をもとに、定量的な観点からその概要を把握した。さらに実空間に顕在化する訪問型関係人口と、オンラインを中心としたつながりである非訪問型関係人口に対象を分離し、どのようにすれば非訪問型から訪問型への転換が生じるか、意識レベルでの検討を実施している。

今後の研究の推進方策

研究申請時には全く予期していなかったCOVID-19の感染拡大という事態に直面し、本研究で取り上げたインビジブルシティの存在はより大きな課題となり、ようやく世間にその重要性が認知されるようになったといえる。その意味で、本研究課題の萌芽性の高さはこの危機的状況下でさっそく証明されたということが可能である。
感染拡大による社会の諸状況の変化により、当初初年度に実施することを予定していたいくつかのことは実施できなかったが、その逆に新たに実施できること、また実施しておかなければならないことがこの状況下で指数関数的に増加している。初年度はただがむしゃらにこの変化に対応すべく、様々な取り組みを行ったが、2年目に向け、少し頭を冷してこれらの取り組みを再体系化し、来るべき時代に向けた新たな流れを構築することが求められる。
本研究のそもそもの目的に立ち返ると、リモート化の進展による一方的な都市活動のサイバー化の実態を客観的に踏まえ、実空間とサイバー空間のバランスある発展を実現していくための道筋を提示することにある。その達成のために、コロナ下でのリモート化推移に関する実態調査を重ね、両空間の長所をあわせもつハイブリッドシティの見える化を検討する。そのためには両空間の潜在連携ポテンシャルを定量的に明らかにし、どのような方策が有効かを具体的に検討する。その検討を可能にするための行動・意識に関するオンライン調査を実施する予定である。あわせて関係人口の分析を深化させ、関連諸制度についても体系的な整理を行う。両シティの長所を活かす基本コンセプトとして、実スペース、サイバースペースの2つのマグネットに対し、両方の利点を備えたハイブリットシティおよびハイブリッド型のライフスタイルの構築を引き続き検討する。

次年度使用額が生じた理由

現在までの進捗状況、および今後の研究の推進方策の項でも記載したが、次年度使用額が生じた理由はCovid-19の感染拡大の影響に伴って生じた様々な自粛行動の影響によるものである。当初予定していた調査出張が全く実施できず、参加することを通じて最新の研究動向に関する意見交換を行う予定であった学会がすべてオンライン化された。また、感染拡大に伴うオンライン化の進展は本研究のテーマにまさに合致するため、当初予定していた調査やデータ収集の方針をゼロから見直す必要が生じ、それに伴ってデータ作成作業なども次年度に実施することとなった。
次年度での使用計画としては、この予期せぬ状況が一つの実証実験の場として極めて貴重な新たな環境を提供したことを活用し、当初は予定していなかった形でのオンライン調査を実施する予定である。具体的には、インビジブルシティの新展開として新たに生じたオンライン化や行動変化を通じてより鮮明な形でその要因と課題対策の検証を進める予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 大都市圏発訪問型関係人口の活動実態、-個人のライフスタイルに着目して-2021

    • 著者名/発表者名
      管野貴文・安藤慎悟・谷口守
    • 雑誌名

      土木学会論文集D3(土木計画学研究・論文集、Vol.38)

      巻: 76(5) ページ: I_51~I_59

    • DOI

      10.2208/jscejipm.76.5_I_51

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 大都市圏発訪問型関係人口の目的地構成とその展開2020

    • 著者名/発表者名
      管野貴文・奥村蒼・谷口守
    • 雑誌名

      都市計画報告集

      巻: 19 ページ: 119-124

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] COVID-19がもたらした生活変化の弾力性、-緊急事態宣言前後3断面でのダイアリーを用いて-2020

    • 著者名/発表者名
      武田陸・小松崎諒子・谷口守
    • 雑誌名

      都市計画報告集

      巻: 19 ページ: 311-317

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 活動内容にみる訪問型関係人口の存立実態、-個人のライフスタイルに着目して-2020

    • 著者名/発表者名
      管野貴文・安藤慎悟・谷口守
    • 学会等名
      第61回土木計画学研究発表会・春大会

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公開日: 2021-12-27  

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