本研究はオンライン利用を通じた「サイバー空間」と「実空間」の両空間を、新しい時代に向けてどう調和させるかということをCOVID-19の感染発生前に問題提起して採択されたものである。その後、COVID-19感染拡大に伴って実際に多くの活動がオンラインに移行し、サイバー空間の比重が高まる中で、むしろ実空間の良さが見直される反動も生じており、その現象分析と政策提言をまさに時代を先取りする形で実施することができた。 過年度の成果としては、どのようにすれば現在のオンライン上の活動を見える化し、またそれらを必要に応じて本人のエモーショナルな気持ちを活性化して実空間上にどう取り戻すかについて、非訪問型(オンライン利用)の関係人口という観点から複数の研究成果を上梓している。特に、サイバー空間から実空間への関係人口を通じた行動変容のあり方について、国土交通省地方政策局と共同することで、全国に及ぶ十分な調査サンプルをベースに、実際の政策提言につなげている。また、サイバー空間に依拠することによって実空間での活動箇所が散逸化してしまうことに着目し、思考停止したDX推進の危険性を指摘するとともに、今後の都市計画と国土計画の連携のあり方について実データをもとに試論を提示した。 最終年度においてはサイバー空間と実空間を高質に融合するうえで、ワークプレイスマネジメント(WM)という概念を新たに提示した。分析においては世代差に基づく価値観の違いにも配慮し、政府が示す地方への分散論が実体を伴わず、郊外への分散が実空間において発生していることも明らかにした。活動を巡る格差は両空間においてむしろ拡大しており、多様化する個人のペルソナに応じた政策対応が必要であることをはじめて個別具体に示すことができた。
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