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2021 年度 実施状況報告書

ICレコーダーを用いて録音した波浪音による現地波浪情報のリアルタイム推定法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 20K21021
研究機関横浜国立大学

研究代表者

鈴木 崇之  横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (90397084)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2023-03-31
キーワード波高予測 / ICレコーダ / 相模灘
研究実績の概要

波高や砕波形態等を把握することは,沿岸地域の災害発生や海岸侵食の危険性などが予測を推定できる重要な情報となる.しかし,継続的に安価にデータを取得することは難しい.上記の問題を解決するため,本研究では海岸に響き渡る波浪音に着目する.これらの音は波の大きさや砕波形式等によって異なるため,それぞれの海岸地形特性により響く音も異なる.そこで,波浪音を陸上部において計測し,さらに,海岸地形形状と相関の高い底質中央粒径をパラメータとして加えることにより,多くの海岸で適用可能な「音の強弱や周波数特性等から波高や砕波形式などの波浪情報をリアルタイムに推定する」モデルを構築することを目的とする.本研究では,波浪場をより簡易,安価に計測できるよう陸上部にて波浪音をICレコーダにより観測し,その時々の騒音特性を解析検討することで,波浪の推定を試みる.
令和3年度においては,相模灘に面する神奈川県国府津海岸にて平均汀線位置から陸側に約40mの地点にて波浪音の観測を行い,この音圧レベルを用いた有義波高の推定を試みた.解析には,2021年8月と12月に計10日間のデータを使用し,計測した各種1時間毎の平均値を使用し,波浪音からの推定値は平塚沖総合実験タワーにて観測されている波高と比較検討を行った.その結果,騒音計を用いた推定では,相対偏差を推定式に導入することで精度よく推定することができた(R2=0.73). ICレコーダ音圧を用いた推定では,直接比較,波の周期,風速の3通りで試みた結果,最も精度が高いものは波の周期を導入する手法であった(R2=0.69).騒音計音圧の推定の時に導入した相対偏差は波の周期特性を考慮する物理量であり,IC レコーダ音圧を用いた推定においてもこの値をパラメータとして導入することで推定精度は向上することが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初波崎海岸においての長期観測を予定していたが,コロナ禍の影響等により実施ができなくなってしまった.しかし,相模灘に面する国府津海岸においては,短期間観測を繰り返すことで静穏時と高波浪時の騒音計,ICレコーダともにデータを取得することができた.それぞれの波高データとの比較を行い,波高推定を実施した結果,騒音計については波の周期にかかわる変数である相対偏差を用いることで高い推定精度があることが実証された.ICレコーダに関しては,波高が0.5m以下のような低波浪時においては精度が低くなることがわかった.しかし,波高が1mを超えてくるとICレコーダでも推定が可能であることがわかった.推定パラメータは騒音計と同様に相対偏差を用いると良いことが示唆されたが,データ量の不足により定量的に示すまでは至らなかった.また,本学造波水路を用いて検討も試みたが,波浪音のみならず造波機の音がデータに入ってしまい,十分な解析を行うことができなかった.
今後の研究の推進方針に詳細を記載するが,令和4年度に関しては相模灘の複数海岸,または,沖合いにて波浪観測が実施されている海岸においてICレコーダを用いた短期間観測を複数回実施する.得られたこれらのデータを用いて,波浪音の相対偏差を用いた推定の定量化を行う.

今後の研究の推進方策

令和3年度もコロナ禍ではあったものの,神奈川県相模灘に面する国府津海岸にて現地観測を実施した.短期間の観測を複数回実施し,低波浪時,高波浪時個別にデータを取得し,これらを合わせて解析を行うこととした.騒音計についてはこれまでと同じく波浪音の相対偏差が波高推定に有効であった.ICレコーダについては波の周期を入れ込むことで精度の向上がみられた.相対偏差を用いた推定ではデータ数に限りがあったことから定量的な解析までは至らなかったものの,定性的にはICレコーダであっても波浪音の相対偏差が波高推定には有効であることが示唆される結果が得られた.
以上のことから,令和4年度に関しては令和3年度と同様に,同一海岸であっても高波浪イベント時,低波浪イベント時など短期間観測を複数回実施し,より多くのデータ取得する.また,他海岸への適用に向け本手法を一般化させるため,相模灘の海岸のみならず,神奈川県,または他県の海岸において波浪観測が実施されている海岸を選定し,そこでの観測も計画する.得られたこれらのデータを統合し,波高推定精度の向上を目指すと共に, ICレコーダを用いた波浪推定の一般化の検討を継続する.今年度もコロナ渦の影響を受ける可能性があるが,少なくとも神奈川県相模灘での海岸での観測を複数回実施し,波浪音の相対偏差を用いた波高推定を提案する.

次年度使用額が生じた理由

令和3年度については,実施された波崎海岸での観測結果を用いては期間が短くなってしまったものの実施することができ,投稿した論文は採択された.しかし,コロナ禍の影響もあり,予定していた相模灘海岸の3地点での観測は1地点のみとなった.そのため,現地観測の際に必要としていた機器,観測アレイ構築費分が残額として残る形となった.加えて,参加を予定していた国内学会はオンライン開催,また,国際学会は中止,もしくはオンライン開催となり,国内,海外出張費についても使用することがなく残額として記載されている.
令和4年度に関してもコロナ禍のこともあり長期間の現地観測は困難であることが考えられる.そこで,令和3年度と同様に,現地データ取得では短期間での観測を数回実施することにより,解析に必要となる最低限のデータ取得を行うこととする.また,相模灘のみならず.比較検討可能な波浪データ観測を行っている海域での観測も新たに計画する.比較する波高データを有しない海域の場合には,数値計算により波浪場の算出を試みることとする.ICレコーダにて得られた波浪音では,騒音計と同様に波浪音の相対偏差が有効であることが示唆されたことから,本年度はこの手法の定量的解析を実施する.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 波崎海岸におけるICレコーダを用いた波高推定の試み2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木 崇之, 荒木 大地, 比嘉 紘士, 中村 由行
    • 雑誌名

      土木学会論文集B3(海洋開発)

      巻: 37 ページ: I_673-I_678

    • DOI

      10.2208/jscejoe.77.2_I_673

    • 査読あり
  • [学会発表] 波崎海岸におけるICレコーダを用いた波高推定の試み2021

    • 著者名/発表者名
      荒木 大地
    • 学会等名
      海洋開発シンポジウム
  • [備考] 海岸・水圏環境研究室

    • URL

      http://www.cvg.ynu.ac.jp/G2/index.html

  • [備考] 横浜国立大学研究者総覧

    • URL

      https://er-web.ynu.ac.jp/html/SUZUKI_Takayuki/ja.html?k=takayuki+suzuki

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公開日: 2022-12-28  

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