研究課題/領域番号 |
20K21034
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田中 貴宏 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (30379490)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 豪雨災害 / 土地利用 / 流域 / 気候変動適応 / GIS |
研究実績の概要 |
本研究は、「豪雨災害適応型流域土地利用計画」のシナリオを描き、従来の河川水害対策を続けるシナリオとの比較を通して、災害リスク軽減、コストの観点から評価を行うことを目的としている。なお、「豪雨災害適応型流域土地利用計画」の作成にあたっては、「まもる」「さける」「つきあう」の戦略的配置を行うこととする(内容は以下)。「まもる」区域:都市機能や人口が集積する区域は、従来どおり、土木的ハード整備により豪雨災害から守るべき区域と考えられ、このような区域を「まもる」区域とする。「さける」区域:国内の全河川に対して、土木的ハード整備を進めることは、現実的に困難と考えられる。河川は上流から下流まで繋がっており、どこかで氾濫すれば、他の区域は助かるという側面もある。そこで、流域内に意図的に氾濫させる区域を設定し、そこでは居住を制限するという方向性も考えられ、このような区域を「さける」区域とする。「つきあう」区域:河川氾濫のリスクを一定程度受容し、建築物の建て方による対策で、リスク低減を図る区域を「つきあう」区域とする。 以上の目的を達成するために、2020年度は以下の項目を実施した。(1)流域内の基礎データ収集、地図化:「2040年時点の人口分布予測図(国立社会保障・人口問題研究所の予測に基づき作成)、現状の都市機能分布図(インフラ、公共施設、商業施設等の立地状況の調査に基づき作成)、土地利用現況図を、それぞれ作成。(2) 豪雨時の流域内水収支計算:気候変動により予測されている豪雨を想定し、流域内の水収支計算を実施。また、その結果に基づき、豪雨時の河川水を逃がすための「さける」区域の必要面積を算定。(3) 「豪雨災害適応型土地利用計画」の作成:(1)(2)の結果をもとに、「まもる」「さける」「つきあう」の配置を行い、「豪雨災害適応型土地利用計画」として作成。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に従い、「研究実績の概要」に記載した項目を実施したため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は以下の項目について、研究を進めることとする。 (1)豪雨災害時の河川氾濫シミュレーション:2020年度の成果をGIS化したものと、気候変動により予測されている豪雨を入力条件とした数値解析を行い「豪雨災害適応型土地利用計画シナリオ」での河川氾濫シミュレーションを実施する。その結果をもとに、「豪雨災害適応型土地利用計画」を実行したケースの災害リスク評価(人的被害、建物被害)を行う。(2)コスト推定:「豪雨災害適応型土地利用計画」の実行に要するコストの推定(2040年まで)を行う。(3)「豪雨災害適応型土地利用計画」の評価:(1)~(2)を、従来の河川水害対策(土木的ハード整備が中心)を続けた際のシナリオに対しても実施し、これとの比較を通して「豪雨災害適応型土地利用計画シナリオ」の評価を行う。
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