研究課題/領域番号 |
20K21044
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
井田 徹哉 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (80344026)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
キーワード | パルス着磁 / バルク / 電動機 / 電気推進 / 超伝導発電機 |
研究実績の概要 |
本研究は、スーパーエコシップや全自動化船といった次世代船舶が将来的に搭載すべき小形高効率な電気推進機として期待されている船舶推進用超電導バルク電動機の回転力を生み出す界磁極について、その高性能を担保しながら実運用へ供するためパルス着磁技術を確立することを目的とする。研究代表者らが開発を進めてきた高温超電導同期電動機はGdBCO高温超電導バルク材料を界磁極に用い、それを極低温へ冷却して得た強磁場によって電磁力を生み出す。以前の研究では波形制御パルス着磁を液体窒素温度近傍で行っており、本研究課題では船舶推進用超電導同期電動機の実用化を推し進めるため、より低温となる60Kでのパルス着磁を幅広い実験条件の下で詳細に行った。その結果、負帰還制御がフラックスジャンプを効果的に制御し、9kJから16kJの大きな磁化エネルギーを高温超電導バルク磁石へ閉じ込め強磁場捕捉を実現することで、捕捉磁束密度の向上を果たすことを示した。この研究成果は2つの国際会議(ASC2020、ISS2020)において発表した。 一方、有限要素法電磁界解析によって複数バルクに対するパルス着磁技術について検討を行った。当該年度は従来研究でアキシャルギャップ型同期電動機の電機子として用いてきた渦巻型銅コイルを着磁コイルとして用いることとし、3個のバルクを集積した界磁極に対して着磁を行った際の侵入磁束密度分布について解析を行った。渦巻型銅コイルは中心付近に強磁場を発生させて高温超電導バルク磁石を着磁する一方、周囲に発生させる逆磁場が捕捉磁場に対して減磁作用を示す可能性が懸念された。しかし、いくつかの条件の下で解析を進めたところ、着磁コイルを適切に配置することで、2回の着磁から集積超電導バルク磁石に対して減磁を抑えて捕捉磁束密度を向上させることが可能なことを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
船舶推進用超電導バルク電動機の界磁極に対するパルス着磁技術を確立するという本研究課題の目的に対して、当該年度は実運用に近づけるためにより低温での着磁を試み強磁場捕捉に関する成果を得た。加えて、集積超電導バルクに対するパルス着磁について有用な知見が得られたことから、研究は順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
負帰還波形制御パルス着磁をより低温で試み、捕捉磁束密度と着磁エネルギーの関係を明らかにする。当該年度の実験結果から、今まで以上に磁束による発熱対策が課題となることを懸念しており、伝熱構造の見直しも合わせて行う。一方、大型界磁極を構成するための集積超電導バルク磁石に対する着磁については当該年度の成果を発展させて、方法、配置とコイル形状の検討を深めて解析を行う。その上で、集積超電導バルク磁石に対する着磁構造を試作し、実験による強磁場捕捉を試み、船舶推進用超電導バルク電動機の実用化を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度を跨ぎ実験を継続しているため、消耗品等の支出に差額を生じたため。差額については本年度に順次使用する予定である。
|