本研究は、スーパーエコシップや全自動化船といった次世代船舶が将来的に搭載すべき小形高効率な電気推進機として、あるいは潮流発電や洋上風力発電といったタービンを使用する海洋エネルギー発電システムにおいて海洋設置に伴う大出力発電機として期待されている超電導同期回転機においてエネルギーを生み出す界磁極について、その高性能を担保しながら実運用へ供するために必須のパルス着磁技術(PFM)を確立することを目的とする。 波形制御パルス磁化と負帰還(WCPM-NFB)は、PFMをベースに、印加磁場の波形を変化させることで捕捉磁束密度を増加させるために開発された先進的磁化技術である。我々が以前に開発した超電導同期回転機の動作温度上限である50KでWCPM-NFBを試みた。WCPM-NFB法による捕捉磁束密度の大きさは受動回路によるパルス着磁と比べて良好であったが、しかし想定を下回った。我々はこの原因を、フラックスジャンプ前に設定した制御目標が、フラックスジャンプ後の磁気・熱条件の大きな変化と相容れなかったことに起因していると推測し、WCPM-NFBの技術を改良し、パルス着磁中に制御目標を変更できるようにした。この改良型技術は一度のパルス磁場の印加によって最大3.17 Tという強磁場捕捉を達成した。 高温超電導バルクを界磁極に用いた同期回転機では、出力の増加に必要な高い総磁束を実現するために、大きな磁極面積を必要とする。結晶性の良い高温超電導バルクのサイズには限度があるため、超電導バルクの集積体を利用する。本研究では超電導バルク集積体へのパルス着磁を試み、磁場中冷却による準静的な着磁に匹敵する細く磁場分布を得た。この成果は、高温超電導バルクアレイにおいてパルス着磁技術を実用可能であることを実験的に示し、大型の高温超電導機器の実用化に道筋を付けた。
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