研究課題
間欠爆轟サイクルとは、超音速燃焼である爆轟波を筒状燃焼器内で間欠的に発生させ、爆轟波によって生成された高圧既燃ガスを噴出することで推力を得るサイクルである。本研究は、間欠爆轟サイクルを超小型人工衛星姿勢制御用Reaction Control System(RCS)に適応し、高精度かつ高機動な姿勢制御を実現するシステムを構築することを目的とする。本年度である2020年度は、実際の宇宙空間で作動可能な5Nクラスのフライトモデル(メタン‐酸素推進剤)の構築を完了した。本成果により、民生品のバルブ、火花点火システム等の流用が可能であること、およびメタン‐酸素系でのシステム成立性を確認した。また、10kPa程度の低背圧環境下での推力測定実験を実施し、最大10ヘルツでの間欠爆轟サイクルを達成した。非定常な燃焼器内部圧力および生成推力の予測モデルを構築し、推力実測値によってその妥当性を検証した。加えて、超小型衛星搭載用に新たに開発した電磁弁のプロトタイプ単体の動作確認試験を開始した。2021年度は、システム全体を小型化する。特に、点火から爆轟波に遷移するまでの距離が燃焼器サイズを決定づけるため、その短縮方法を模索する。上記小型パッケージ化ができれば、生成される非定常微小推力を正確に測定するためのスレッド試験や回転試験を実施可能となり、物体運動から生成推力を同定する。以上の研究により、間欠爆轟スラスタのRCSとしての実現性および性能を実証する。
3: やや遅れている
民生品を用いたフライトモデルを構築できた点、エチレンよりも爆轟性に劣るメタンでの作動を実証できた点、搭載を想定している小型電磁バルブが入手できた点から、研究は進んでいる。しかしながら、コロナウイルスの感染拡大に伴い、実験および装置開発が遅れたため、やや遅れていると判断した。
2021年度は、以下の2点に注力して研究を進める。1点目は、システム全体の小型化に取り掛かる。既に火花点火システムや電磁弁は民生品が流用できるめどが立っているため、電磁バルブ制御システムおよび推進剤タンク等の小型化を進める。2点目は、非定常微小推力の測定方法の提案と実証である。上記の小型パッケージ化によって、完全独立したシステムでの滑走試験および回転試験が可能になる。物体の挙動をレーザー変位計や高速度カメラで捉えることで推力を求めることを計画している。
コロナウイルスの感染拡大に伴い。予定していたスラスタシステムおよび推力測定装置の購入が遅れたため。上記に関連して、実験遅延のためガスボンベ、圧力センサ等の消耗品の購入も見送ったため。
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