研究課題/領域番号 |
20K21048
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
後藤 浩二 九州大学, 工学研究院, 教授 (60274487)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 疲労 / 疲労亀裂伝播則 / 両振り塑性仕事 / 応力拡大係数 |
研究実績の概要 |
現在の疲労亀裂伝播挙動の評価法は,破壊力学パラメータである応力拡大係数範囲をパラメータとするParis則等を用いることが常識と認識されているが,実構造物中に存在する亀裂に対する応力拡大係数範囲を与えることは容易ではない.そこで,本研究では通常の構造強度評価で実施される応力解析の結果のみを活用して疲労亀裂伝播現象を定量的に考慮できる,革新的な疲労亀裂成長手法の構築の足がかりを得ることを目的としている. 研究初年度は,研究代表者が疲労亀裂成長の駆動源であると着目してきた,亀裂先端近傍において生じる繰返し塑性仕事に着目した疲労亀裂伝播シミュレーション方法を検討した.研究代表者が過去に実施した疲労亀裂伝播試験を評価対象として,リメッシング処理を活用した弾塑性有限要素解析から得られる亀裂先端近傍の繰返し塑性仕事をパラメータとして疲労亀裂伝播履歴を推定した.その結果,二段ブロック荷重振幅条件下では良好に疲労亀裂成長履歴の推定が可能であることを確認した.一方,スパイク荷重条件下では,荷重急変直後の伝播挙動の推定が劣ること,船舶が嵐に遭遇した際に船体に作用する荷重履歴をモデル化した嵐モデル荷重条件下では,疲労亀裂伝播履歴の測定精度が劣ることを確認した.これらの理由を考察した結果,リメッシングの精度や解析で入力した応力とひずみの関係が単調負荷時のものであったことなどが理由であることを確認した.そのため次年度は,繰返し負荷時の応力とひずみの関係を広いひずみ範囲で測定し,解析に適用することを計画している.また,有限要素解析の入力パラメータとして与えた,繰返し塑性仕事と亀裂伝播速度の関係について,デジタル画像相関法による同定も試みたが測定誤差が大きいため,誤差を低減させる方法の検討が必要なことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では解析手法の構築が主な課題であるが,比較的穏やかな荷重変動履歴下では,初年度に検討したリメッシング処理を活用した弾塑性有限要素解析により亀裂先端近傍で生じる繰返し塑性仕事を計算可能であることが確認できている.計算精度のさらなる改善のためには,両振り条件下での応力とひずみの関係をできる限り広いひずみ範囲で取得し,入力データとすることが必要である.これについては,文献調査により類似材料に関するデータを取得することでも,ある程度の代用が可能であるため,次年度で当初想定した進捗は達成できると判断している.また,次年度にこれの測定を計画しているため,適切な測定値が得られると,より有用な研究成果が得られるものと期待している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の要検討課題として,(1)弾塑性有限要素解析におけるリメッシング手法の改善,(2)繰返し負荷条件下でかつ広範囲のひずみにおける応力とひずみの関係の測定と有限要素解析への適用,(3)両振り塑性仕事と疲労亀裂伝播則との関係の実験による測定,があるが,いずれも初年度に今後取り組む問題を具体的に設定できたため,これらの問題設定に応じて解決する.
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