研究課題/領域番号 |
20K21049
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
太刀川 純孝 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究領域サブリーダ (90470070)
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研究分担者 |
櫻井 篤 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20529614)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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キーワード | 宇宙機 / 極低温 / 放射率 / メタサーフェス / MIM構造 / ふく射 / ラジエータ |
研究実績の概要 |
本研究は、赤外天文衛星等に適用する「極低温用ラジエータ」の開発を目的とする。具体的には、MIM(Metal-Insulator-Metal)構造を用いて、10~30K程度の黒体ふく射のピーク波長である100~300μm付近において広帯域にわたって高い放射率を備える材料を開発する。現在のところ、極低温で高放射率を示す適切な材料は存在しない。極低温における赤外放射(電磁波)の波長は長く、従来の材料を使って放射率を高めるためには、材料を厚くする必要がある。しかし、この方法は、質量増加、コンタミ増加、熱抵抗増加などを招くため、適切な方法とは言えない。そこで、MIM構造と呼ばれる人工的な共振構造を作り、厚さが薄くても長波長の電磁波に対する吸収(=放射)が大きくなる材料を開発する。方法としては、電磁波解析コードを用いてMIM構造を設計、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を使って材料を作成し、FTIR(Fourier Transform Infrared Spectrometer)を使って反射スペクトルを測定することによって、放射性能を評価する。 2020年度は共振波長の広帯域化を目指し、複数の共振点をもつように表面の周期構造の大きさを変化させることにより、共振波長の広帯域化を実現した。2021年度は上記に加え、MIM構造を2段にし、異なる誘電体を用いることによって、共振波長のさらなる広帯域化を実現した。2022年度はMIM構造を3段にすることによって、さらに共振点を増やし、共振波長の広帯域化を実現した。2023年度は、MIM構造を2段にし、誘電体も同じ材料を使う一方で、周期構造の大きさを1段目と2段目で変化させることによって、広帯域化にチャレンジした。その結果、140~240μmの広い波長域で高吸収率(=広放射率)を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
面内方向の周期構造の大きさを変化させる方法、面外方向に異なる誘電体の段数を増やす方法および面外方向に周期構造の大きさを変化させる方法を用いたサンプルを作成し、共振波長の広帯域化が可能なことを示すことができている。従って、順調に研究を進めることができていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
いくつかの広帯域化の手法が確立できたので、今後は遺伝的アルゴリズムなどの手法を用い、周期構造の大きさ、およびピッチ、誘電体の厚さ、層数などを最適化する方法を試み、それを試作して放射性能を評価したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、サンプル製作のペースが遅くなってしまったため、予定どおりの研究を進めるためには次年度使用額が必要となった。 使用計画としては、周期構造の大きさ、ピッチ、誘電体の厚さ、層数を遺伝的アルゴリズム等を使って最適化し、広帯域化をさらに進める試みを実施すること、また、研究成果をまとめた論文を作成し、投稿することを計画している。
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