研究課題/領域番号 |
20K21053
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
増田 光弘 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (00586191)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 浮体式防災住居 / 水害 / 津波 / 防災・減災 / 水槽実験 |
研究実績の概要 |
本研究は、近年多発している洪水等の水害から人命および被災者の財産を守ることを目的に、水害の規模により住居そのものを浮上させ住居を守る浮上式防災住居を提案し、その有効性を水槽実験および数値シミュレーションによって明らかにするものである。本年度は本研究の最終年度であったが、前年度の進捗状況に記載したとおり、コロナウィルスの影響で本来実施予定であった実験施設が複数年度にまたがり使用できない期間があったことから、使用実験施設および実験方法を見直す必要があった。前年度に提案・製作した水害再現用昇降装置を用いて、本年度も回流水槽にて水槽実験を実施した。本実験では、浮体ユニットの浮上と取水量の関係を調べることを目的として、取水口面積が浮体ユニットの浮上に与える影響について検討を行なった。それにより、取水口面積が前年度の実験時の1/50の取水口面積となっても浮体ユニットは浮体上面への浸水も発生せず、浮上できることがわかった。大きすぎる取水口は取水口内部への漂流物や汚泥等の流入や構造強度の低下を招く可能性があったが、本実験によってこれらの課題点について問題ないレベルまで取水口面積を小さくできることが確認できた。また、漂流物が浮体式防災住居に流れてきた場合の防災性能についても検討を行なった。防水壁前面では流れが妨げられ淀みのような状態となる。そのため、周囲の流速そのままに防水壁に漂流物が衝突することはないが、さらに浮体ユニットが防水壁に囲まれていることによって漂流物が浮体ユニット上に影響を与えることもなかった。これらの結果から、浮体式防災住居は水害および水害による漂流物などに対して十分な防災性能を有していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度の段階で新型コロナウィルスの影響で当初予定してた実験施設での実験を行なうことができなくなり、2021年度の段階で状況が好転しない可能性が高かったことから、実験施設の変更および、変更後の実験施設で実施可能な実験方法に変更する必要があった。それにより開発されたのが、回流水槽を用いた水害再現昇降装置である。水害再現昇降装置の導入によって、当初計画していた実験方法に比べてより実際の水害現状に近い状態を再現可能となり、結果としてより良い実験成果を上げることができるようになった。水害再現昇降装置の導入以降は順調に実験データを積み重ねることができているが、本影響によって実験の進捗が1年ほど遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、1)浮体ユニット上部の建築物が浮体ユニットの動揺特性に与える影響、2)係留された状態の浮体ユニットの浮上性能について、3)数値シミュレーションによる水槽実験の再現、4)浮上式防災住居の具体的なコンセプトや3DCGによるイメージをまとめ、被災可能性のある地域への情報発信資料を作成していく。まず、1)については新築木造家屋を上載することを想定し、平屋、2階建てにおける浮体ユニットの動揺特性について検討を行う。2)は、防水壁四隅に建てられた係留ポールに浮体ユニットを係留することを想定し、防水壁内部で自由に動揺できなくなった状態における浮体ユニットの浮上性能について検討を行う。3)は、水槽実験では上載建築物や浮体式防災住居全体の形状について定量的な検討を行うことが難しいことから、数値シミュレーションによって定量的な検討を行う。それらの結果を基に、4)の情報発信資料の作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の段階で新型コロナウィルスの影響で当初予定してた実験施設での実験を行なうことができなくなり、2021年度の段階で状況が好転しない可能性が高かったことから、実験施設の変更および、変更後の実験施設で実施可能な実験方法に変更する必要があった。そのため、2021年度に回流水槽を用いた水害再現昇降装置を開発し、それ以降は順調に研究が進んでいる。ただし、本問題によって1年程度研究に遅れが出たことによって次年度使用額が生じた。本来であれば、2022年度は浮体ユニット上の上載建築物再現模型の作成やそれを用いた水槽実験の実施、より多くの学会での研究発表を行う予定であった。それらは2023年度に持ち越され、まず上載建築物再現模型を作成し、学生アルバイトを雇用して水槽実験を実施する。また、本年度国内学会、国際学会で研究成果を公表するとともに、研究成果の情報発信資料を作成する。本次年度使用額はこれれのために使用される予定である。
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