本研究は、津波や洪水等の水害から人命および被災者の財産を守ることを目的に、浮上式防災住居を提案し、その有効性を水槽実験および数値シミュレーションによって明らかにするものである。最終年度である2023年度は、1)係留された状態の浮体ユニットの浮上性能の検討、2)浮体ユニット上部の住居部が浮体ユニットの動揺特性に与える影響の検討、3)数値シミュレーションによる水槽実験の再現を行った。まず、浮上中の浮体住居の動揺を抑制することを目的に、1)の係留状態を考慮した浮体ユニットの浮上性能についての検討を行った。係留索による張力によって浮体ユニットの円滑な浮上が阻害される可能性が懸念されたが、係留索によって浮体ユニットの浮上性能が低減することはなく、係留索によって浮体ユニットの浮上時の動揺を抑制できることが確認できた。次に、2)として平屋、二階建て、三階建ての住居部を想定して重心位置を調整した住居部模型を浮体上部に載せ、自由動揺実験を行った。本実験により、浮体上部に住居が設置された状態であっても浮体住居が浮遊状態を保てることを確認することができた。最後に、3)として2次元、3次元MPS法を用いて水槽実験の再現ならびに、住居部を考慮した浮上式防災住居の水害時の浮上シミュレーションを実施した。本シミュレーションにより、MPS法が水槽実験を良好な精度で再現可能であること、浮上式防災住居の耐水害性能検討シミュレーションを実施可能であることが確認された。研究期間全体を通して、①防水壁に設けた取水口からの取水性能、②係留状態・無係留状態での浮体ユニットの浮上性能、③住居部を考慮した浮体住居の動揺特性、④漂流物に対する防水壁ならびに浮体ユニットの防災性能を水槽実験・数値シミュレーションによって調査し、申請者が提案した浮上式防災住居が水害に対して有効であることを示すことができた。
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