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2021 年度 実施状況報告書

建物構造性能の資産価値評価と社会システムへの導入

研究課題

研究課題/領域番号 20K21058
研究機関神戸大学

研究代表者

大谷 恭弘  神戸大学, 工学研究科, 准教授 (40194196)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2023-03-31
キーワード構造性能 / 資産価値 / 経済的価値 / 耐震改修 / 免震改修 / 地震LCC / 改修費用 / 実績調査
研究実績の概要

本研究では、「建物の構造性能の価値」に着目し、それを建物に属する財産的価値として位置づけ、建物所有者にとっての資産価値として社会システムの中に定着させるための導入プロセスを研究します。研究目的を達成するために、3つのテーマについて同時進行的に研究を進めています。これらは、Ⅰ.建物構造性能の経済的価値評価手法の構築について、Ⅱ.建物構造性能の経済的価値を不動産鑑定分野等で活用可能な情報に変換する方法について、Ⅲ.建物構造性能の財産的価値を社会に導入するための方法について、です。
Ⅰのテーマについては、現状、建物の構造性能向上を図るための耐震改修費用に関する費用算出モデル構築のためのデータが少ないことを背景に、耐震改修に実績を有する企業に対し、実績データ収集のためのヒアリングやアンケート調査を行うことを試みました。特に、費用データの公表がほとんど行われていない免震改修工事費の実績調査については、社会情勢との関係で調査の実施事態に困難を極めましたが、年度後半には協力団体や協力企業を得られ、貴重な改修費用データの蓄積を行うことができました。
また、テーマⅠおよびⅡと関連することとして、構造耐震指標と地震LCCとの相関性についての検討に着手しました。
テーマⅢに関連することとして、建物の構造性能を経済的評価するための手法において用いている地震LCC評価を耐震改修構法選択ツールとして活用する方法を示し、その有効性・可能性について示すことができました。
なお、本研究では全体システムの構築と費用算出モデルを含む地震LCCの計算、システムの実装および最終的なシステムの公開を行うため、初年度終わりにWSを研究計画に沿って補助金により導入しました。導入後はシステム構築に関わる作業等に活用してきています。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

3つの研究テーマのうち、特にテーマⅠについては当初の計画に対して進捗に後れを生じ、研究期間の延長につながっています。新型コロナ感染症拡大に伴うアンケート調査やヒアリングの実施困難あるいは延期等により、経済的評価の基礎データとなる改修工事実績データ収集に遅れがでました。また、改修工事費用の実績データ収集においても、改修工事実施企業の建物オーナーや利害関係者との関係、あるいは工事実施企業にとって実績データを知的財産として位置付けする場合等においてデータ非公開となる場合が多く、実績データ収集において想定以上の困難に直面しました。研究の意義の説明等を行うことで、年度の後半には関連団体からの協力やいくつかの改修工事実施企業から実績データを得ることができ、先行研究で使用していた費用算出モデルの精度向上を図ることにつながりました。
テーマⅠおよびⅡと関連することとして、これまでは既存不適格建築物の耐震改修に伴う構造性能向上の経済的評価において、非改修・従来型耐震改修・免震改修の大きな区分での評価を行ってきましたが、構造性能変化に対してより細かく対応するため、構造耐震指標と地震LCCとの相関性についての検討に着手しました。
テーマⅢに関連することとして、建物の構造性能を経済的評価するための手法において用いている地震LCC評価を耐震改修構法選択ツールとして活用する方法を示し、その有効性・可能性について示すことができました。また、これまでは対象用途として集合住宅および事務所ビルとしてきたことに加え、他の用途建築物に対しても本手法の有効性を検証することを試みました。

今後の研究の推進方策

今後は、費用算出モデルの精度向上より図るため実績データの収集を継続的に行っていくとともに、3つの研究テーマを昨年度までの成果・試行に基づいて精力的に推し進めて行きます。特にテーマⅡとⅢに関連して、先行研究において協力頂いたことのある不動産関連団体の協力を得て、建物構造性能の経済的価値を不動産鑑定分野で活用可能な情報に変換する方法に関して本研究で検討を進めている具体的手法ついて研究を進める計画です。
また、本研究で構築する全体システムや費用算出モデルを含む地震LCCの計算システムを、導入したWSに実装するとともに、システムの公開に向けた準備を行います。

次年度使用額が生じた理由

本研究を進め、建物の構造性能を経済的評価するシステムを適切なレベルまで構築できた段階では、外部の共有サイトからのデータの取り込みを行うとともに当該システムの公開を行うことを計画しており、そのためのソフト開発において人件費等が発生します。
また、次年度も継続して行う予定のデータ収集・調査活動に置いて旅費の発生を予定していいます。また、当初の最終年度において使用する印刷費や成果発表のための旅費の発生も予定しています。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 建物の改修構法選択ツールとしての地震 LCC の活用に関する研究2021

    • 著者名/発表者名
      本郷将崇・後藤直樹・中野菜也香・大谷恭弘
    • 学会等名
      2021年度日本建築学会大会学術講演会
  • [学会発表] 地震ハザード情報の変化が地震 LCC を用いた建物構造性能の経済的評価に及ぼす影響2021

    • 著者名/発表者名
      後藤直樹・本郷将崇・中野菜也香・大谷恭弘
    • 学会等名
      2021年度日本建築学会大会学術講演会

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公開日: 2022-12-28  

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