研究課題/領域番号 |
20K21059
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
上月 康則 徳島大学, 環境防災研究センター, 教授 (60225373)
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研究分担者 |
宮定 章 和歌山大学, 災害科学・レジリエンス共創センター, 特任准教授 (00836851)
井若 和久 徳島大学, 人と地域共創センター, 学術研究員 (50795060)
松重 摩耶 徳島大学, 環境防災研究センター, 学術研究員 (70845205)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 災害ケースマネジメント / DCM / 南海トラフ巨大地震 |
研究実績の概要 |
R2年度に得られた成果は次の通り. (1)災害ケースマネジメント(Disaster Case Management,DCM)のシンポジウムから市民啓発のために必要なこととして次の3点が見いだされた.a「個々の現場でされているDCMの事例を整理すること」については,多様な主体が一人一人個別に生活支援を行うこと,それを制度化すること.実施にあたっては地域性に考慮して,災害前から準備しておく必要があること.b「DCMシンポジウムの参加者アンケートから,今後のDCM啓発の課題と対応を把握すること」については,参加者の属性によって目標達成度が大きく異なるため個々に啓発する必要があること.c「南海トラフ巨大地震に対応できる徳島県でのDCMの方向性について考察すること」については,「巨大地震発災後では,十分なDCMは困難なため,発災前からのシームレスに取り組む.そのための,事前に制度化,多様な関係者と連携し,事前・事後のDCMの内容の検討を進めること. (2)2016年台風10号岩泉町水害でDCMを実施された阿部氏へのオンラインヒアリングを行った結果,南海トラフ巨大地震発災後にDCMを行う際に混乱しないためには次のことをしておく必要がある:a)仮説的にもDCM対象となる被災者数を推定しておくこと,b)DCM対象者を誰にするか,訪問するのか,誰がするのかなどを決めておくとこと,c)行政や生活困窮関連の市民団体との連携を作っておくこと. (3)DCM対象となる県民の数を推算した:生活再建が困難となる世帯数は徳島県では約11%の34,000世帯にものぼると試算された.これは過去に例のない規模であり,事前にその数を以下に減らすことができるか?が大きな課題であることがわかった. (4)未災地でのDCMの試行:南海トラフ巨大地震で甚大な被害が想定されている地域で町民のブロック塀改修を対象にDCMを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で県外への移動などが制限されたため,当初予定していた,各地のDCM実施事例調査などは十分にできなかった.しかしながら,R2年3月に実施できたDCM啓発用のシンポジウムとその参加者分析で,今後DCMを啓発して幾における課題などを見いだすことができた.またオンラインが手馴れてきて,ZOOMを使って実施者へのヒアリングもできた.また資料を収集し,南海トラフ巨大地震が発生したときのDCMの対象となる被災者数を推算することもできた.以上のことから,十分とは稲伊賀,「おおむね順調に研究は進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
(1)DCM被災者の定量的推定:機会を見つけて進め,行政担当者とその妥当性について詰めていく. (2)DCMの潜在的要素:「経済的困窮者は発災後に要支援者になる」という意見を実施者から頂いたので,その観点からDCMについて検討を行う. (3)DCMにおけるボランティア:ニーズ調査などは,災害ボランティアになる人々のネットワークとその運営管理に長けた人,団体をみつけ,連携を図ること. (4)行政担当者を対象としたDCMの有効性,必要性に関する啓発活動:県の担当者,NPOと計画を立案する (5)DCMカルテをそろえておく:実際に用いられたカルテをそろえて,未災地でも試行してみる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は次の二点である.出張を伴う調査を研究分担者と複数回予定していたが,コロナ禍によりそれらを全く行うことができなかった.またその際に行う予定であったヒアリングなどの調査データのとりまとめに学生に謝金を支払う予定であったがそれも十分にできなかった. 使用計画は,災害ケースマネジメントが実施された仙台市,岩泉市,大船渡市,広島市,鳥取市,熊本市でのヒアリング調査旅費と南海トラフ巨大地震で被災想定されている未災地市町村の市民を対象にしたWEBアンケートなどのアンケート費用を予定している.
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