降雨中に地下水位が一定時ないしは減少時に斜面のせん断変位が進行する計測事例がしばしば見られる。これを再現するために,模型土槽の上下端において地下水位を自由に調節できる,地下水位調節型模型土槽を製作して降雨中の地下水位を自由に上下する実験を行い,その間の模型斜面の地表面変位を計測した。これらの実験シリーズでは,降雨と共に,地下水位の上昇と下降を繰り返し,かつ地下水位の最高水位を徐々に大きくした。すると地下水位上昇後の下降時に地表面変位が微増した。また崩壊直前の最後の地下水位上昇過程では,地下水位が急増する間は地表面変位の増加が小さかったが,直前の最高地下水位を超えると,地表面変位の増加量が大きくなり,急増して崩壊に至った。ただしこの地表面変位が急増する過程は,地下水位上昇高が小さく,地下水位の上昇による地表面変位の増加だけでは説明できないように思われる。地下水位上昇に伴う変位と,一定応力下のクリープを組み合わせたメカニズムの説明が必要と思われる。 次に繰り返し降雨を与えた模型斜面上の地表面変位の計測データを用いて,地下水位上昇時及び下降時の変位を再現するモデルの検討を行った。本モデルは地下水位上昇に伴う変位増加と,地下水位一定時のクリープ変位の増加を組み合わせたものである。前者は地下水位と変位の関係を双曲線関数で近似したモデルを,後者は福囿により提案された,クリープ変位の速度と加速度の両対数軸上の線形関係を用いた。地下水位上昇時は前者のみを,地下水位低下時及び一定時は後者のみを用いて変位を計算した。すると地下水位上昇時のみならず下降時の変位の経時変化も比較的良く再現できた。
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