研究課題/領域番号 |
20K21062
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
谷本 潤 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (60227238)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 感染症 / 季節性インフルエンザ / COVID-19 / vaccination game / 数理疫学 / 進化ゲーム |
研究実績の概要 |
様々な階層で錯綜する人間社会ネットワークを伝搬して拡がるインフルエンザ感染に着目し,情報科学,疫学,ネットワーク科学,進化ゲーム理論,複雑系社会物理学を応用した学際アプローチに基づき,計算機システムに仮構する人工社会上に相互浸透的マルチエージェントシミュレーション(Multi Agent Simulation; MAS)モデルを理論構成した.構築したこの人工社会システム上で,現実世界では行い得ない様々な状況を想定した一連の数値実験を行うことにより,複雑社会ネットワーク上で繰り広げられる感染動態(感染症の伝搬;純粋な物理ダイナミクス)と社会システムにおけるワクチン接種受容性動態(協調的行動の意志決定に関する社会ダイナミクス)とが共進化する複雑現象を忠実に模擬しながら,行政,公衆衛生,防疫,メディア情報など多様なスケールで様々取り得る諸対策の効果を定量的に予測評価する枠組み開発の足掛かりを得た. 具体的には,現在,世界規模で起きつつあるCOVID-19の大流行に鑑み,従来の季節性インフルエンザに対してワクチン接種を想定したVaccination gameに代わって,所謂,Quarantineや強制力を伴うロックダウンなどの社会的隔離方策を外積的に導入する対策を加味したIntervention Gameモデルの基本的理論構成を行った. 初年度たる本年度では,Intervention gameの枠組みとしては,数理疫学をベースとし,感染症流行をSEIRプロセスで追跡するモデルを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
十全なVaccination Gameモデル構築の実績と経験をベースにして,社会的隔離方策およびマスク着用をコンパートメントとして導入するCOVID-19にカスタマイズしたODEモデルの理論構成を行った.この数理疫学ベースのODEモデルの基本特性を,スパコン上の系統手数値実験により確認し,現下,各国で観察されているCOVID-19罹患者の動態を十分な精度で再現できることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果を踏まえ,前記のODEモデルに人の意思決定過程を進化ゲーム理論でモデル化した枠組みを融合させ,Vaccination gameモデルを完成させる.同モデルの基本動特性を,スーパーコンピュータを用いた人工社会システム上の数値実験により確認する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画上,費用のかからない数値検討を前倒ししたこと.また,CIVID-19の影響で出張に代わって遠隔システムによる懸鼓幽情報調査などが一部可能となった事などによる.
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