山間部や沿岸部の道路周辺に発生する霧に対して、交通の安全性を維持するため、超音波の干渉により霧粒子を捕獲し、通行者の視界を確保する技術の創出を目的とする。霧粒子と霧発生条件の関連および超音波を照射した領域の光学特性を明らかにするため、以下を実施した。 (1) 霧の発生条件および霧粒子の特性の把握 これまでに整備した視程計と霧粒子を計測するパーティクルカウンタによって、人工的に生成した水滴粒子を計測し、超音波とドライアイスを利用して寸法が異なる粒子の生成を可能とした。非常に細かいドライアイスによるものと自然の霧に似た条件の双方で水滴粒子が浮遊する領域に超音波の定在波を生成し、本研究で製作した超音波照射装置によって効果的に水滴粒子が捕獲できること、および気象庁のデータより微風時の低視程現象が多数見られていることを明らかにした。 (2) 超音波を照射した霧領域の光学特性の評価 光学計測系を構築し、超音波の定在波が生成した水滴粒子の粗密分布における粗の箇所で光の透過率が高くなることを確認した。また、この粗密分布の見られる範囲が、超音波装置間の筒状の領域であること、本装置では70㎝程度の距離で光透過率が明瞭に異なることを明らかにした。また反射板を用いて片側だけからの超音波照射でも有効に粗密分布が形成できることを示した。但し本計測においては、水滴粒子の分布領域は超音波による定在波の発生領域よりも大きく、光学計測系と超音波の定在波の発生領域の間にも水滴粒子が浮遊した。よって、水滴粒子の粗密箇所の光学計測は、その周囲に存在する水滴粒子の影響を受けていると考えられる。従って、超音波によって浮遊する霧を複数のスリット状に捕獲して視界を確保することの原理的な確認はできたが、その光学特性の定量的な評価は十分とは言えず、光学計測方法の更なる改良、あるいは装置の大型化の必要性が見いだされる結果となった。
|