研究実績の概要 |
圧電材料は電圧を加えると伸縮(電歪効果)し、逆に力を加えると電圧が発生する(圧電効果)という効果を持ち、工業的には機械エネルギーと電気エネルギーの変換を担う重要な物質群である。また、セラミックスの一般的な特徴として、物理的・化学的に安定で加工性が良いという点が挙げられる。セラミックス圧電材料はこのような利点を活かし, 通信機用のフィルタや振動子などの民生部品から, 超音波トランスデューサーなどの工業製品まで, 幅広く応用されており, 現在, 世界での市場規模は1000億円超に上ると考えられている。 圧電材料として代表的なペロブスカイト型酸化物 (ABO3) を有する(K,Na)NbO3 (KNN) は鉛をふくまないため、環境親和性材料として広く研究されている。本研究は、高温高圧下の水溶液での反応である水熱法を積極的に活用することにより、形態だけではなく、内部構造が制御された酸化物微粒子を作成し、従来成し得なかった電気特性や触媒活性を有する機能性微粒子の合成方法を確立しようとするものである。 今回の結果から、Na-rich相をシェル, K-rich相をコアとしたコアシェル構造の形成が確認できた。また、K-rich相およびNa-rich相は明瞭な界面をもって粒内に共存していることが分かり、二相の界面では急激にAサイト組成が変化していると考えられる. 。これらの反応は、置換反応生成物の原料KN粉末の形状を継承し, 表面に微細孔を有するという特徴を矛盾なく説明することができ、原料物質より新たな生成物質のモル体積が小さくなるような条件を設計し水熱合成を行うことで、KN粉末以外の幅広いペロブスカイト型酸化物の組み合わせでコアシェル型粉末を作製できる可能性があり、圧電体粉末設計の新たな指針を示すことができたといえる。
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