研究課題/領域番号 |
20K21071
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福山 博之 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40252259)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 窒化アルミニウム / 結晶成長 / その場観察 / Ni-Alフラックス |
研究実績の概要 |
窒化アルミニウム(AlN)成長用フラックスとしてNi-Al合金融液を取り上げ、熱力学的検討に基づいて、窒素分圧1 barおよび0.5 barの条件下でフラックス組成をパラメータにして、AlN生成の駆動力を温度の関数とする結晶成長ダイアグラムを作成した。 結晶成長ダイアグラムに基づいてAlN成長の最適条件を見つけるためには、成長を支配する反応の駆動力を成長温度、窒素分圧、フラックス組成をパラメータとして制御し、繰り返し成長実験を行う必要がある。本研究では、効率よく最適条件を見つけるために、電磁浮遊法を適用した。電磁浮遊法とは、高周波コイル内で電磁気力により金属試料を浮遊・融解させる技術である。本研究では、この電磁浮遊法を用いることによって、1g程度の試料で、フラックスからの結晶成長実験を行うことができるため、効率よく最適な結晶成長条件を見出すことができる。 高純度NiおよびAlを原料として、Alのモル%で20モル%、30モル%、40モル%の3種類のNi-Al合金をアーク溶解炉で溶製した。これら3種類のフラックスを全圧0.5 barに設定した電磁浮遊装置内で浮遊させて一定温度に保持した後、窒素ガスを吹き付けて、フラックス表面でAlN結晶が成長する様子を高速度カメラでその場観察した。反応の駆動力が大きい場合、初期に結晶核が多数生成し、次第に合体・凝集して液滴表面を覆っていく様子が分かった。一方、駆動力が小さい場合には、結晶核からゆっくりエピタキシャル成長していく様子が分かった。成長後のフラックス表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、駆動力が大きいと3次元の樹枝状のAlN結晶(デンドライト)が観察されるが、駆動力が小さい場合には、成長のモードが2次元となり、平滑な結晶面となることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、Ni-Alフラックスを用いて、熱力学的な検討に基づいて、系統的に窒化アルミニウム(AlN)結晶成長実験を実施できた。この段階の成長実験には、電磁浮遊法を採用し、成長の駆動力を変化させながら、駆動力の関数として結晶成長挙動を整理し、効率よくの最適条件を見出すことに成功している。特に大きな問題は無く、順調に研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終段階として、溶融フラックス表面での窒素ガスとの反応による窒化アルミニウム(AlN)生成を目的とする反応チョクラルスキー法の実現可能性を検証する。前年度に実施した電磁浮遊装置を用いたその場観察した結果に基づいて、坩堝を用いたAlN結晶の成長実験を行う。まず、1800℃まで昇温できるように、既存の結晶成長炉を改造する。また、結晶成長用坩堝としてAlN焼結体で作製した坩堝を準備する。種結晶には、当研究室でアルミナ熱還元法で作製した小型のAlN結晶を用いる。種結晶は、表面窒化したアルミナロッドに固定する。 ここまでの研究で確定したNi-Alフラックス融体および最適な反応の駆動力(融液組成、成長温度)を用いて、AlN成長を試みる。回転数および引き上げ速度をパラメータとして結晶の育成を試みる。成長した結晶については、成長速度、転位密度、不純物濃度などの評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、大学内での研究活動が制限を受けたこと、ならびに学会がオンライン開催となったため、旅費の支出が無かったことなどが理由として挙げられる。
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