研究課題
物質に対して超高圧印加(>1 GPa)すると、「大気圧下では準安定」な結晶構造に変換することができる。このように、物質への高圧印加は、新物質や新物性の探索に非常に有効である。高圧印加の方法として、エピタキシャル成長を利用する方法がある。単結晶基板上に成長させたエピタキシャル薄膜は、基板から生じた応力により、バルク体では準安定な構造を形成する場合がある。したがって、単結晶基板上に成長させた薄膜に対して超高圧印加すれば、相乗効果により多様な準安定物質の合成が期待される。そこで本研究では、薄膜試料に超高圧印加するためのセルを開発し、種々の単結晶基板上に合成した薄膜試料に対して、15 GPa以上の超高圧印加することを可能にした。 そして、TiO2薄膜とCaSiO3薄膜に超高圧を印加し、それぞれを高圧相薄膜に変換することに成功した。前者については、α-PbO2型TiO2の単相エピタキシャル薄膜合成に初めて成功した。さらに、結晶構造を精査し、超高圧印加に伴う相転移機構を議論した。同じ物質間の相転移においても、使用する基板ごとに相転移機構が異なることを見出している。後者については、大気圧下では非晶質化するとされるCaSiO3に着目し、超高圧処理により、ペロブスカイト構造を持つ薄膜結晶の合成に成功した。得られた薄膜には、基板や圧媒体から元素拡散が生じていたが、加熱により非晶質化したことから準安定構造であることを確認した。
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